人間の思考には大きく分けて「ポジティブ(積極的・前向き)」と「ネガティブ(消極的・否定的)」の2つがあります。
一般的に、ネガティブ思考であるよりもポジティブ思考の方が良い(逆に言えば、ネガティブ思考は悪)という刷り込みがされていますが、実際はそうではありません。
何故なら、ポジティブ思考にもネガティブ思考にも一長一短があり、それぞれメリットとデメリットがあるからです。
例えば、介護業界が躍起になって行っている「一方的なポジティブキャンペーン」を見て、言い知れぬ違和感や不快感を感じてしまったことがある現役介護職員もいらっしゃるのではないでしょうか。
つまり、「ポジティブ思考にもデメリットが存在し、一方的に偏ってしまうと効果的どころか不快感さえ与えかねない」ということになります。
これはネガティブ思考も同様ですが、「ネガティブはそもそも良くない思考」というように捉えられることが多いため、良い思考として捉えられがちなポジティブへの偏りの方が問題になってきます。
今回は、ポジティブ思考に存在するデメリットとポジティブすぎる介護職員が危険な理由について記事を書きたいと思います。
ポジティブ思考のデメリットとポジティブすぎる介護職員が危険な5つの理由
それでは早速、ポジティブ思考に存在するデメリットとポジティブすぎる介護職員が危険な5つの理由をご紹介していきたいと思います。
①無責任にネガティブ思考を否定する
ポジティブ思考の人は、「ポジティブこそが最高」「ネガティブ思考はダメなこと」という偏った排他的な認識を持っていることが多く、ネガティブ思考そのものやネガティブな人を根拠なき自信で無責任に否定する傾向があります。
もっとひどくなると、ネガティブを否定した上でポジティブを押しつけてくるため、人間関係がギクシャクしてしまうことがあります。
確かに、いつも明るく元気で前向きな介護職員は見ていて気持ちが良いものですが、人間の感情は常に変化をしますし介護現場の状況を常にポジティブに捉えられるものでもありません。
周りの職員や利用者などが「どうしよう…」と思い悩んでいる時に、「クヨクヨしても仕方ないですよ、大丈夫♪大丈夫♪」などと言い放たれ、一方的にポジティブ思考を押しつけられたら、その無責任さに時としてイラついたりムカついたりしてしまうことでしょう。
ですから、ポジティブ思考一辺倒の介護職員は危険なのです。
②自意識過剰で自分を過大評価することで成長しない
常にポジティブ思考の人は、自意識過剰で自分を過大評価する傾向があります。
何故なら、ポジティブ思考の人は「自己受容の度合いが高いから」です。
つまり、「自分の長所も短所も全て受け入れて、その上で自分は唯一無二の存在なのだからそれ以上もそれ以下もない」と思い込んでしまうのです。
もちろん、誰しも自分自身は唯一無二の大切な存在ですが、全てをポジティブに受け入れてしまうことで成長しなくなります。
「できなくてもそれが自分なのだから問題ない」
「自分の欠点は長所でもあるのだからありのままでいい」
と考えてしまいます。
ポジティブすぎる介護職員は、できないことができないままとなり、短所や欠点を改善する努力もせずに成長しなくなってしまうため危険なのです。
③問題や課題が見えなくなる
ポジティブすぎる人は、無責任で楽観的な人が多いため、問題点や課題が見えない、又は、敢えて見ないようにする傾向があります。
介護現場では、物事を慎重にすすめたり、問題点や課題を見つけて情報をアップデートしたり改善していくことが必要となってきますが、「楽しい」「嬉しい」「頑張る」などということしか言わない介護職員は表面上のものしか見えていない可能性が高いため危険です。
過度のポジティブ思考で問題点や課題を見つけることもできずに軽率な行動を取っていると、ミスや事故を発生させてしまうことにもなりかねません。
介護現場では、時として「物事を慎重にすすめる」というネガティブな思考も必要なのです。
④自分に嘘をつくことになる
全ての出来事をポジティブに受け止めることは、一見素晴らしいことのように見えますが、中には「ネガティブな感情をむりやりポジティブに転換させている」という場合も多いのではないでしょうか。
その時はそれでいいかもしれませんが、厳密に言えばそれは「ネガティブに蓋をして自分に嘘をついている状態」です。
そんな不健全な状態が積もり積もっていけば、いつしか自分の中の糸が切れてしまったり、ねじれた感情が精神を蝕んでしまう可能性があります。
ただでさえストレスフルな介護現場で極端にポジティブに偏った働き方をしていると、ずっと自分に嘘をつき続けることになり「嘘つきの自分」に対して自己嫌悪に陥ってしまったり、精神を病んでしまうことが往々にしてあり得るため危険なのです。
⑤行動力がない
ポジティブ思考の人は行動力があるように見えるかもしれませんが、実は意外と行動力がなかったりします。
何故なら、脳内でポジティブな夢や理想を思い描くことに多くのエネルギーを消費してしまい、実際になかなか行動に移せなかったり、そもそも楽天家であるために「今すぐ行動しなくても大丈夫だろう」と思ってしまうからです。
介護現場でも、口だけは素晴らしいことを言ったり理想を語るくせに、自分では全く動こうとしない介護職員がいるのではないでしょうか。
また、そういう口だけ達者なポジティブ介護職員がいると、周りの職員に負担が掛かってしまうことになるため危険なのです。
最後に
今回は、ポジティブ思考のデメリットとポジティブすぎる介護職員が危険な5つの理由についてご紹介しました。
「ポジティブ思考はダメ」「ポジティブよりネガティブの方が良い」と言っているわけではありません。
あくまで「どちらにしても極端に偏った思考は良くない」「ポジティブすぎる介護職員は危険」ということになります。
この記事をご参考に「ポジティブ最強神話」を信じて疑わない人はデメリットや危険性にも目を向けて頂き「丁度良くできるように」してみてはいかがでしょうか。