介護現場(職場)に新人が入職来た際は、新人研修が行われます。
新人職員が全くの未経験者であれば1から介護の基礎を教育したり、経験者であっても職場内の決まりごとや利用者の処遇等を知っておいて貰う必要があります。
どちらにしても、まずは「利用者の顔と名前を覚える」ことから始めなければ介護ができないので、新人職員さんは頑張って覚えましょう。
そんな中、介護現場にありがちなヤバい新人研修があります。
今回は、介護現場のあるあると言っても過言ではないような、新人介護職員に襲い掛かるヤバい新人研修10選をご紹介します。
【あるある】新人介護職に襲い掛かるヤバい新人研修10選
全ての介護現場がそうであるわけではありませんが、介護現場であるからこそありがちなヤバい新人研修があります。
以下の10の項目に3つ以上当てはまっている職場はイエローカード、5つ以上当てはまっている職場はレッドカードです。
①新人研修のカリキュラムがない
新人研修は、カリキュラムに沿って順を追って教育していくことで、漏れなく一通りの内容を網羅することができます。
しかし、介護現場の新人研修でありがちなのが、そもそもカリキュラムがないということです。
つまり、その日その日の行き当たりばったりの出たとこ勝負となるため、順を追って教育することもできません。
教育の内容に、漏れや重複も出てくるので新人介護職にとっては内容を整理して覚えることが難しく、混乱してしまったり覚えるまでに時間が掛かってしまうことになります。
新人研修のカリキュラムがない背景としては、
- カリキュラムを作成できる人がいない
- 作成してもカリキュラムに沿って教育できる人がいない
- 介護現場の新人研修は行き当たりばったりのOJTで十分という古い考え方の方針
などが挙げられます。
カリキュラムがない新人教育は間違いなくヤバいでしょう。
②指導係が毎日違う
新人研修の指導係は必ずしも同じ人物ではありません。
これは、介護施設では24時間体制のシフトになっているため、同じ人と必ず同じ日・同じ時間に一緒に勤務に入れるわけではないからです。
それはそれで仕方がないことなのですが、教育者が日替わり弁当のように変わると、新人研修の進捗状況がわからないため重複した内容を教育することになったり、内容に漏れが生じたりします。
この場合、やはりカリキュラムで進捗状況を把握できるようにしていないとヤバい新人研修となってしまうことでしょう。
③指導係によって教えられる内容が違う
日々、色々な上司や先輩に教えてもらう中で、同じ内容の業務を教わっているのに教える人によって言っている内容が違うということが往々にしてあり得ます。
A先輩に教わった通り介護をすると、B先輩から「何でそんなやり方をしているの!」などと怒られたりします。
新人介護職員にしてみれば、A先輩に教わった通りしただけなのに怒られてしまうのですから堪りません。
これも、カリキュラムや指導方法・介助方法が統一されていないから起こってしまうヤバい新人研修です。
④主任やリーダーのOJTは全部やらされる
実際に利用者の介護を指導係についてもらいながら教わるOJTですが、指導係が主任やリーダーの場合は注意が必要です。
「主任やリーダーに教わるなら安心」と思いきや、本来二人で手分けしてする業務を教育という名のもとに新人職員が一人で全部するハメになるからです。
「一人でできるようにならないといけないからやってみて」という状態が延々と続くと、それは新人職員が一連の業務を一人でこなすことになるため、その業務量と疲労とストレスは計り知れません。
また、ちゃんと業務を分担してくれる主任やリーダーであった場合でも、それらの人達は大変忙しく、他の職員等が様々な報告や連絡や相談に来たり、用事が出来てどこかへ行ってしまったりします。
その度に業務が中断してしまうため、結局は「悪いけどやっといてくれる」などと新人職員に言い残し主任やリーダーはどこかへ行ってしまい、新人職員が全てを一人でこなさなければならないという業務過多でストレスフルな状態になってしまうことが往々にしてあり得ます。
主任やリーダーのOJTでは、新人研修なのに業務全てを丸投げ状態でやらされる可能性があるためヤバいのです。
⑤新人を放置
常に人員不足の介護現場では、新人に教育したり教えながら指導するという時間が取れない状況になってしまうことも少なくありません。
限られた時間の中でやらなければならない業務は山積みですし、利用者の訴えや行動は「待ったなし」ですから、教える側の職員にも余裕がないのです。
そうなると、新人介護職に構っている時間などないため放置状態になってしまうだけでなく、足手まといのような扱いになってしまうため、到底新人教育などと呼べる状況ではないためヤバいのです。
⑥利用者の下の名前で指示を出す
新人職員は利用者の名前を覚えるのに必死です。
利用者のフルネームを覚えられれば一番良いでしょうが、取り急ぎまずは名字から覚えていかなければ追いつきません。
やっと覚えても、初めのうちはまだ短期記憶ですからすぐに忘れてしまったり、わかっているのにすぐに名前が出てこない、という不安定な状態が続きます。
そんな状況の中で、上司や先輩職員が新人職員に指導したり指示を出す際に、利用者の下の名前で指示を出すケースがあります。
「としこさんをトイレに誘導してから、トメさんを起こしてきて」
などという指示を出されると、名字を必死で覚えている新人職員は混乱してしまいます。
何故なら、利用者の下の名前までは覚えきれていないため、誰のことを言っているのかサッパリわからなくなってしまうからです。
仮に薄々わかったとしても、間違いがあったら困りますから、結局は再度利用者の名字を確認しなければなりません。
このケースは、上司や先輩職員が何かの理由で普段から利用者の下の名前で呼んでいるために悪気なく発せられた指示なのでしょうが、新人に配慮をするなら利用者の「名字」又は「フルネーム」で指示を出してあげることが大切です。
⑦指導係が指導を嫌がる
介護現場では、当日の出勤者の中から指導係が選ばれることも多く、日替わり弁当状態もあり得ることは先述しましたが、当日主任などの上司から指導係を頼まれた先輩職員が、
「えー、私ですか?嫌だー無理ー!」
などという反応をしているのを新人職員が目の当たりにしてしまうと、いたたまれない気持ちになります。
先輩職員が指導係を嫌がった背景としては、
- 業務が山積みで指導などをしている暇がないので嫌
- 自分に指導係としてのスキルと自信がないので嫌
- 新人職員そのものが嫌
などが考えられますが、どちらにしても新人職員に対して良い印象を与えませんし、良い結果も期待できないヤバい新人研修と言えるでしょう。
⑧指導係がヒステリックで支離滅裂
介護現場でOJTや新人研修をする指導係は、必ずしも指導力があって人格者であるとは限りません。
中には、感情論ばかりの人や機嫌の良し悪しで言うことがコロコロ変わる人や高圧的でヒステリックな人も存在します。
新人職員が指導係にわからないことを質問すると、
「少しは自分で考えてから聞いて来い!」
「何でもかんでも聞いて来ずにやってから言え!」
などと言い放ち、それを真に受けた新人職員がわからぬまま介助を行いミスをしてしまったら、
「何で先に聞いて来ないの!」
などと支離滅裂なことを言う指導係もいるので注意が必要です。
このような支離滅裂な指導係やヒステリックな指導係に当たってしまった場合はヤバい新人研修になります。
⑨マニュアルや処遇一覧表を見せて「はい、やってみて」
介護現場によっては、マニュアルや利用者の処遇や対応方法が書かれた一覧表が備え付けられていたりします。
処遇や対応方法とは、「とろみ材の量」や「尿取りパッドの種類」や「口腔ケアの方法」などのことです。
新人職員にこのマニュアルを説明したり一覧表の見方を教えて、「ここに全部書かれているから、はい、やってみて」などと無茶苦茶な指導をする新人研修はヤバすぎます。
何故なら、教わったのは「一覧表の見方だけ」だからです。
まだ利用者の顔と名前の一致がおぼつかない新人職員に、その利用者の状態などが全くわからないまま丸投げしてもできるはずがありません。
- 立位は取れるのか
- 自力なのか半介助なのか全介助なのか
- 総入れ歯なのか部分入れ歯なのか
- 義歯は上だけか下だけか上下ともか
などが全くわからないのですから、新人職員は固まってしまうか闇雲にやるかのどちらかしかありません。
まずはマニュアルや一覧表をチェックしながら、指導係が一人ひとりの利用者の介助方法をやって見せ、その後に実際に新人職員にもやって貰うようにしなければ覚えられるものも覚えられないでしょう。
そもそも、マニュアルや一覧表は全く介助方法がわからない職員のためにあるのではなく、既に介助方法がわかっている職員が適宜、再確認やチェックするためのものですので、新人職員に「はい、やってみて」というような指導方法はあまりにも無謀であり不適切だと言わざるを得ません。
⑩昼食・休憩は利用者と同じ空間でとるように言われる
休憩時間になった時に、上司や指導係から「昼食は利用者さんとお話ししながら食べて下さい」などと言われる新人研修は相当ヤバいです。
いや、この場合新人研修がヤバいのではなく、その職場・事業所・法人そのものがヤバいと言っても過言ではありません。
何故なら、昼食場所を指定してくるということは、労働基準法第34条3項に抵触するおそれがあるからです。
(休憩)
第三十四条
③ 使用者は、第一項の休憩時間を自由に利用させなければならない。【引用】労働基準法
利用者と一緒に昼食をとらせる建前としては、
- 職場の雰囲気に慣れるため
- 利用者とコミュニケーションを図り、なじみの関係を構築するため
などが考えられますが、要は「休憩時間にも利用者の見守りをさせている」のです。
つまり、それは労働であり休憩ではないため、ちゃんとした休憩を取らせていないという点でも労基法違反となる可能性があります。
こういったことを言う職場は、個別ケアやなじみの関係の構築を謳うユニット型の施設にありがちで、新人職員に限らず他の職員も利用者の生活スペースで休憩を取っているのが特徴です。
最後に
今回は、新人介護職員に襲い掛かるヤバい新人研修10選をご紹介しました。
皆様が働いておられる職場の新人研修はどのような感じでしょうか。
もしも今回紹介した内容に当てはまっていれば、それはヤバい新人研修となっているかもしれません。
新人なのですから最初から仕事ができるわけがありません。
その前提で、カリキュラムを組んで順序立てて新人育成をしていくことが大切です。
また、介護現場では、新人育成をする人材(つまりは指導係)も居ない・育てていないという問題もあり、「卵が先か鶏が先か」のような状態になってしまっているケースも少なくありません。
それもこれも、人員が確保できていないとできないことなので、「あいつは使えない」などと言って焼き畑農業のように職員を使い潰していくのではなく、しっかりと育てていくという方針が重要です。
コメント
余計なことですが、いい年して自分はまだまだフラフラではあるものの、介護から離れて何年か経ちました。昔に愚痴のようなものもあらかた対応していただき、最近的な介護とそれによる自分の感情も持ちえ洋画内であまり語れませんが、1つ気になりました。
⑩の利用者(以下、入所者)との昼食は新人研修以外の平時も含みますか?
今のところ2社経験し、その2社目のブラック介護施設(特養)は常時これでした。1社目はちゃんと昼休憩(昼食)が設けられていたため、私はこれに驚きました。現状違法かはわからないですが、少なくともあの時の違和感は間違ってはいなかったと思えほっとします。
新人研修やその違和感は置いとくにしても、新人期間の食事介助はどうにかならないでしょうか。
あれから何年と経ち、いっそう業界もキラキラ思想で悪くなって食事介助という概念を言い換えているかもしれない。「食事介助/介護はダメだけど、自力で食べるように誘導しなさい」に磨きがかかっているかもしれない。
食事介助は業務上避けられないとは言え、少なくとも初っ端の1週間ぐらいは、わからない者同士で新人を当ててもよさそうな認知症の入所者に割り当てると思います。基本的に新人は下手でも猫を被って対応すると思います。しかし、それが悪くてその入所者に舐められる。数か月も経つと自分の立場等々わかってきますが、その認知症老人がその部署の問題児な印象です。キラキラ介護論で言えば、「認知症は記憶は残らないけど感情は残る・・・猫を被っていることはわからないか忘れて、見下していい対象(自分より弱い)という感情は残る」みたいな。あの後、2人後輩ができましたが、皆同じになりました。もっとも、その入所者は認知症になる前からそういう性向のようではありました。
その時の担当者や指導役にもよるのでしょうが、意思疎通が取れず静かな入所者のそばにおいて、せめて2~3日全体を静かに全体を見させていた方が放置感があり新人としての辛さもありますが、後々のためにいいのかなと思うのですがどうなのでしょう。
>めど立てたい人さん
こんばんは~
コメントありがとうございます^^
見守りをしながらの昼食(休憩)というのは、新人にさせる事業所は新人研修以外の平時も含む傾向にある事業所だと言えます。
そもそも、新人であろうがそうでなかろうが、その待遇自体が労基法違反でありブラック確定な事業所でしょう。
感じられた違和感は間違っていなと思いますよ、私も違和感を覚えましたから。
新人の食事介助は、言い方に語弊があるかもしれませんが、「イージーな利用者」からやってもらう方がいいでしょうね。
とは言え、人員不足の職場であればそうも言っていられない状況があるのかもしれませんが、だから新人が育たないし、もっと言えばそんな状況だから人員不足が解消できない負の連鎖に陥っているとも言えます。
イージーではない利用者の中で、見下していい対象になるのかはわかりませんが、新人は情報も対応方法も技術も知識も乏しいので手を焼くのは間違いないでしょうね。
個人的には、新人さんには1か月くらいは静かに全体把握をする時間を作ってあげればいいと思うのですが、人員不足が故にそれが許されない環境があるので、これまた負の連鎖を断ち切れない状況だと思われます。