介護職員をやっていると頻繁に「辞めたい」という気持ちが沸き起こってきます。
仕事自体は他者を支援する素晴らしい仕事だと思っているのですが、やはり退職原因トップ3にあがるような「低賃金」「劣悪な職場環境」「人間関係」などが辞めたい気持ちに拍車をかけます。
「辞めたい」と思うことと「辞めます(若しくは辞めたい)」と口に出すことは全く別で、「辞めたい」と思うことは感情や感想であるのに対し「辞めます」と口に出してしまえば辞意を固め転職に向けて動き出すことになる行為です。
「介護職を辞めたい」と思う気持ちは重々承知なのですが、口癖のように「辞めたい」「辞めます」と言う介護職員が存在するので、今回はそのことについて記事を書きたいと思います。
「辞める辞める詐欺」とは
口癖のように「辞めたい」「辞めます」と言うのに、決して辞めない人の一連の行為を「辞める辞める詐欺」と言います。
本気で辞意を固め、退職を決意したのなら、いくら引き留められようが、辞めるために時間と労力が掛かろうが退職をします。
しかし、辞める辞める詐欺の場合は、本気ではないので辞めません。
「退職願」や「退職届」を出すことはまずありません。
万が一、そのまま受理されてしまったら自分が困るからです。
何故、本気ではないのに「辞める」と言うのかと言えば、その理由は三通り考えられます。
理由①「辞めると言うことで上司を困らせたい」
部下が辞意を伝えてきたら上司は焦るものです。
ただでさえ人員不足なのに、これ以上職員が辞めていけば更に現場が回らなくなります。
そういう現状をわかった上で、上司を「焦らせてやろう」「困らせてやろう」「どうせ引き留めてくるだろう」という計算の上で辞意を伝えます。
また、上司や同僚に引き留められることで「自分はこの職場に必要な人間なんだ」という「自分の存在価値の確認作業」を行う人もいます。
ちょっと病的な感じもしますが、こういう愉快犯のような職員がいるのも事実です。
理由②「自分の価値を上げ待遇を改善させる」
上司に辞意を伝えると必ず「理由」を聞かれます。
その際に「給料が安いから」「待遇が悪いから」ということを素直に伝えると、上司や経営者は退職して欲しくない一心で、給料や待遇の改善を検討してくれる場合があります。
実際、辞める辞める詐欺によって「給料を2万円アップさせるからもう少し頑張ってくれないか」という「戦利品」を勝ち取った職員もいます。
こういう駆け引きは「自分の進退を賭けて勝負に挑むという一種の能力」だと評価できます。
賢いやり方だとは思いますが、そう何度も使えませんし、そもそも「自分がそれだけ会社にとって価値のある人物」でなければあまり意味がありません。
理由③「目の前の面倒な業務から逃げたい」
仕事をしていく中で、明らかに面倒くさかったり難解な業務を押し付けられることがあります。
ストレスを抱え込んでしまったり、どうしても逃げ出したい気持ちが頂点に達した時に「辞意を伝えて目の前の業務から逃げる」という手を使う職員もいます。
退職されてしまったら元も子もないので、引き留めつつ業務負担を減らしたり他の職員に振り替えたりします。
その結果、本来の目的であった「面倒な業務から逃れること」が達成されたため、辞意を撤回します。
上司としては、今後も当面は面倒な業務を振ってくることもないでしょう。
上司からの評価は下がりますが、出世コースも目覚ましい昇給も準備されていない介護職員にとっては特に気にする問題ではありません。
「辞める辞める詐欺」によって発生する周囲の労力
辞意を申し出た職員が「辞める辞める詐欺」なのか本気なのかがわからない場合、周りの職員にも様々な負担や労力が発生します。
例えば「引継ぎ業務」「面倒な業務が回ってくる」などです。
その結果、「やっぱり辞めない」のですからズッコケてしまいます。
そして無駄な労力と業務だけ背負わされてしまうため、とても迷惑です。
そんなことが繰り返されると周りの職員にとっては「ああ、あいつがまた言ってるよ」「辞める辞める詐欺師は本当に迷惑だ」という悪い印象を与えてしまうことになります。
辞める辞める詐欺は多少なりとも周囲に迷惑を掛ける可能性があるのです。
最後に
今回は「辞める辞める詐欺」について解説しました。
自分の価値を確認したり、処遇改善を勝ち取るために上手く使えば効果的ではありますが、少なからず周りの職員に迷惑を掛けてしまう行為でもあります。
そんな手を使わないと自分を守れない本人だけでなく、業界の風潮にも問題があるのではないでしょうか。
「言ったもの勝ちの世界」だということがよくわかります。
「辞める辞める詐欺」を何度もしてくるような職員にはズバっと「わかったから早く辞めなさい」と言い切れるだけの人員確保と待遇を準備しておく業界になって欲しいものです。
そして、本当に「頑張っている職員」「努力をしている職員」「キャリアアップしたいと思っている職員」をもっと大切にしていかなければ、辞める辞める詐欺は後を絶たないでしょうし、人員確保も進んでいかないのです。
「良い職員ほど辞めていく」という介護業界にありがちなジンクスは変えていかなければなりません。