介護業界の待遇や職場環境は劣悪なわけですが、長く働いている人からはあまり賃金や待遇についての不満を聞きません。
介護保険制度が始まってまだ20年弱ほどしか経っていない歴史が浅い業界ではありますが、それ以前は措置時代と呼ばれており介護の仕事自体はあったわけです。
「介護現場で5年働けばベテラン」とも言われる「地盤の緩い業界」ではありますが、ごく稀に「20年選手の大ベテラン」も存在します。
周りを見渡してみると、そういった「20年選手」が賃金や待遇に不満を言ったり改善を訴える姿はあまり見掛けません。
単純に考えれば「介護業界で20年も働いていると不満など言わなくていい何かがある」と言えます。
今回は、「介護業界で長年働いている人から賃金や待遇についての不満が出ない理由」について記事を書きたいと思います。
長年働いている人から不満が出ない5つの理由
介護現場で20年も働いているだけで尊敬に値する凄いことだと思います。
何故、長年働いている人ほど賃金や待遇や職場環境についての不満や改善の訴えが少なくなってくるのでしょうか。
理由①「言う元気がない」
介護業界に20年以上いる人は、現在若くても40歳代から上は70歳代の人になろうかと思います。
年齢が高くなるにつれて不満を言う人が少ないように感じています。
介護現場で長年働いていれば、体のどこかしらにガタが出てくるでしょうし、1日一生懸命働けばクタクタになります。
もし自分があと10年以上介護現場で働き続けていたとして、今以上に日々満身創痍の状態であれば「不満を言う気力や元気さえない」という予想ができます。
現在20年選手の中にも、日々満身創痍で不満を言う気力や元気さえない人がいるのではないでしょうか。
理由②「先が見えている」
20年選手の中には50歳代後半や60歳代の人も多くいます。
その年代の人は「数年以内に年金が貰えることがほぼ確定」しています(退職金制度や共済があれば退職金が貰えるのも確定しています)。
「あと数年頑張れば年金や退職金が貰える」という先が見えれば、人生設計も立てやすいでしょうし、年金だけでは生活が成り立たない場合は、今の会社を定年退職後に「再雇用」や「嘱託社員」として働き続ける選択肢が考えられます。
今の会社に再雇用してもらおうと目論んでいる場合は、「会社に対するネガティブなことを言うと再雇用の道が断たれてしまうかもしれない」という心理が働き、不満を言うこともないでしょう。
再雇用されずに年金生活をするにしても、数年先が見えているため「それまでの間、穏便に働いておきたい」という心理が働いていると考えられます。
理由③「収入に不満がない」
そもそも「今の収入に不満がない」場合もあります。
それなりの副収入があったり、配偶者の収入と合算すれば中流階級以上の世帯所得があったり、遺族年金等があるなどの場合です。
「介護職員としての収入は低いままで問題がない」のです。
20年選手に限らずですが、介護職員として働いている分は低収入でも問題が無ければ不満も出ないことでしょう。
理由④「感覚が麻痺している」
長年介護業界で働いていると、その方針ややり方や待遇や職場環境が摩訶不思議状態であっても、摩訶不思議状態が常態化してしまうことで感覚が麻痺して「当たり前のこと」になってしまいます。
「当たり前のこと」に対して不満や改善を訴える人はいないでしょう。
「茹でガエルの法則」に似た状態と言えるかもしれません。
『2匹のカエルを用意し、一方は熱湯に入れ、もう一方は緩やかに昇温する冷水に入れる。すると、前者は直ちに飛び跳ね脱出・生存するのに対し、後者は水温の上昇を知覚できずに死亡する』
【引用元】ウィキペディア「茹でガエル」
この場合、感覚が麻痺しているというよりも「仮に致命的なことであっても、環境適応能力があるが故に徐々に変化していくと気づかなかったり適応してしまう」という性質があるのが特徴です。
長年働き続けることで、感覚が麻痺していたり変化に気づかず適応してしまうと不満も出ないことでしょう。
理由⑤「一番の古株」
同じ職場に20年もいれば、恐らく「一番(又はそれに近い)の古株」でしょう。
上司と言われる人に対しても遜色なく忌憚の無い意見が言えたり、確固たる地位を現場で築いているのではないでしょうか。
現場で「指導する立場」である可能性も高くなります。
指導する立場の人間が、職場の不満や賃金のことは言いにくいでしょうし、そもそも既に「お局職員や老害職員そのもの」である可能性もあり得ます。
職場環境を悪化させている権化が職場環境について不満を言うのは、巨大なブーメランが自分に刺さってしまうことになるので言うはずがありません。
最後に
今回は、介護業界で長年働いている人から賃金や待遇についての不満が出ない5つの理由について記事を書きました。
もちろん、長年働いている介護職員全てに当てはまるわけではありませんが、当たらずとも遠からずといったところではないでしょうか。
「先が見えている年代の介護職員」と「まだまだ先が見えない年代の介護職員」は置かれている立場や環境が違うわけですから、発信していく内容が違うのも当然と言えます。
どちらか一方が良いとか悪いではなく、「各々が置かれている立場も環境も違う」ということを理解しておく必要があります。