介護業界に存在する「無意味な研修やセミナー」を見分ける5つの視点

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自分のためにも、事業所や利用者のためにも、介護職員個々が専門性を磨いたり知識を蓄え、経験を積んでいくことはとても大切なことです。

そのひとつの方法として

  • 研修を受講する
  • 資格を取得する
  • セミナーや勉強会に参加する
  • 書籍を読む
  • ネットで調べる

などで、各々が自己研鑽に励んでいらっしゃることと思います。

しかし、「世間の常識は介護現場の非常識」と揶揄されているように、介護業界独特の

  • 綺麗ごとばかり
  • 実現不可能なことばかり
  • 受講料や参加費を搾取されるだけ

というような「無意味どころか損しかしない」研修やセミナーも当たり前のように行われているのが実情です。

以前、「綺麗ごとばかりの研修でも会社から打診があれば受講した方が良い理由」についての記事を書きましたが、今回は「介護業界に当たり前のように存在している無意味な研修やセミナーを見分ける5つの視点」について記事を書きたいと思います。

介護業界には民間資格も含め様々な資格や研修が存在します。 現在、介護職員が取得しておいた方が良い王道の資格と研修は ...

視点①「常識を見失わない」

情報を得る際に「自分の思考を停止させない」ということがとても大切です。

当たり前のことのように思われるかもしれませんが、介護業界には非常識ばかりが溢れています。

対価の伴わない「やりがい搾取」がスタンダードな業界なので注意が必要です。

例えば、

「利用者の暴言や暴力は介護職員の寄り添い方で改善するので専門性を磨くべき」

と言っている人もいれば、もう一方で

「寄り添う介護にも限界があるので、利用者の暴言や暴力に対しては適切な方法で医療に繋げる選択肢を持つべき」

と言っている人もいます。

同じ問題に対して違う見解になります。

折衷案を考えると

「利用者の暴言や暴力は介護職員の寄り添い方で改善する可能性もなきにしもあらずだが、それでも無理なら適切に医療へ繋げましょう」

と言うのなら納得もできます。

しかし、実際の現場では認知症の周辺症状(BPSD)での暴言や暴力は、介護職員としての関わり合いだけでどうにかなるものではありません。

内服薬に漢方の「抑肝散」が処方されている利用者も時々見掛けますが、どちらにしても少なからず「医療」の介入は必要なのです。

そもそも利用者の暴言や暴力に関して言えば、認知症ではないクリアな利用者が、人生や自分に失望してヤケのやんぱちになったり、職員の対応で本当に腹立たしいことがあって、一時的に暴言や暴力が出てしまった可能性もあり得ます(だからと言って他害行為は許されませんが)。

そういう利用者に対して寄り添ったり詳しく話を聞いたり、対応の不備を謝罪することで悲しみや悔しさや怒りがおさまった例なのではないかと思っています。

そんな状況なら、介護現場でなくともあり得る話です。

それに尾びれ背びれをつけて誇張し、無理やり認知症介護に当てはめた机上の空論なのではないでしょうか。

※ごく稀に認知症の周辺症状にも効果的だった例があるのかもしれませんが、それはスタンダードとは呼べません。

つまり、研修やセミナーで情報や知識を得ていく際に、「自分の思考を停止させずに、世間の常識に当てはめて考えていくこと」が必要です。

視点②「講師の肩書きに惑わされない」

日本人は肩書きに弱いと言われている人種なので

  • 理事長
  • 施設長
  • 代表
  • 社長
  • 事業主
  • 医師
  • 弁護士
  • 研究者
  • コンサルタント
  • カリスマ
  • 著名人
  • 議員
  • 役人

などの肩書きやステータスのある人の発言を盲信し鵜呑みにしがちです。

肩書きやステータスの虎の威を借り「〇〇先生がこう言っていた」などと鵜呑みにする前に、内容をしっかり自分で吟味する必要があります。

もちろん、介護以外の専門分野に関しては得るものがあるでしょうが、こと介護に関しては現場で実際に働き続けている我々の方が「プロ」なのです。

視点③「カモにされていないか」

最近では、介護職員側に立った考え方の講師やコンサルタントも増えてきました。

「介護職員側」と言っても、ひいきしたり偏った見解ではなく「極々当たり前で常識的なこと」に過ぎないのですが、今まで虐げられてきた介護職員にとっては、「とても斬新なもの」に映ります。

そういう常識的で斬新な内容の研修やセミナーは

「介護職員ではなく事業所経営者や業界の偉いさんに聞いて欲しい」

と思ってしまうのは私だけでしょうか。

しかし、残念ながらそういった内容は未だ介護業界のスタンダードではないので、事業所や業界の偉いさんたちには「需要」がありません。

需要がなければ存在価値もなくなってしまうので、需要があるところを探して供給しようとします。

結局、その供給先はいつも「現場の介護職員」なのです。

もちろん、介護職員として知らなかった知識や情報を取り入れていくことは大切なのですが、業界や現場に活かしたり反映できない知識は後生大事に温めておくことしかできないのです。

「情報や知識を得て専門性を高めていくことは良いこと」

「需要と供給が一致しているのだから問題ない」

ということはわかってはいるものの、「結局、介護職員が搾取されているだけではないか」という違和感を感じてしまいます。

その需要と供給の構図は、内容が違うだけであって、現在の介護業界が行っている「受講料や資格取得費を介護職員から搾取する構図そのもの」に見えます。

まずは冷静に「自分はカモにされているんじゃないだろうか」ということを考えることも必要です。

視点④「講師が無資格・未経験」

自分が教わる講師が無資格・未経験だとちょっと引いてしまいます。

要は「現場経験は無いけど知識は豊富」ということになります。

それだけ知識があって介護職員を指導したり支援したいと思うのなら、まずは現場に立って欲しいと思います。

資格が全てではないにせよ、「介護福祉士」に介護の専門性や知識を伝えるのに無資格では経験不足ではないでしょうか。

他の職種や業界で無資格や未経験者が講師をしているのを聞いたことがないのですが、やはり介護は「特殊」なのでしょうか。

研修やセミナーを受講する前に、「講師の経歴や所有資格などを確認しておく」ことが必要です。

視点⑤「内容がキラキラした綺麗ごと」

未だに現場職員に対してキラキラした綺麗ごとを教える講師もいます。

理想論としては理解できるのですが、そういった内容は介護福祉士資格を持っている人にとっては既にわかっていることですし、より良い介護をしたいと願っているのは現場職員だって同じなのです。

それをサブリミナル効果のようにあたかも斬新な切り口かのように精神論を訴えられても、我々が本当に求めているのは「その綺麗ごとを実行するためには具体的にどうすればいいのか」ということです。

「転倒の危険があるから利用者を長時間座らせておくのが介護でしょうか?」

「いい加減に介護職員は考え方を変えなくてはならない」

というような内容を言う講師もいます。

私に言わせれば「そんなことは既にわかっていること」なのです。

でも実際の現場では理想とは違い、そうしなければならない「原因や理由」があるのです。

人員不足だとか、業務過多の環境であるとか、問題は山積みです。

その原因には触れずに「考え方を変えろ」とは、現場にしわ寄せするだけの図々しい言い方だと感じます。

「考え方を変える必要があるのは、講師の方」ではないでしょうか。

もっと言えば、事業所や業界や国の考え方を変えていってもらう必要があります。

おっしゃるような「綺麗ごと」を介護職員が実施していくために、まず何より先決なのは「人員確保」であったり「給与水準の見直し」であったり「人間関係や業務の押し付け合い等の職場環境改善」なのではないでしょうか。

そこをすっ飛ばして、理想論や綺麗ごとを並べ立て、介護職員にばかり押し付けようとするから「何も変わらない」のです。

介護職員だって、与えられた環境の中で働く「組織の一員」であるという認識があれば、その講師の言っていることは「木を見て森を見ず」なのは明らかです。

解決方法が「介護職員の自己犠牲」以外には見つからないような「綺麗ごと」ばかりを「キラキラしながらご教授される」のは御免被りたいです。

人間の性格が十人十色あるように、介護職員の性格も考え方も十人十色あります。 中には裏の顔を持つ介護職員も存在することを過去記事...

最後に

今回は「介護業界に蔓延る無意味な研修やセミナーを見分ける視点」について記事を書きました。

もちろん「搾取される」「お金が掛かる」と言っていたらどんな研修も受講できませんので、最終的には「常識の範囲内」で「自分のレベルに見合った必要な研修を自分の判断」で受講したりセミナーに参加したりしていけばいいかと思います。

「自己投資にはお金を掛けろ」という言葉もあるので、それはそれでいいのですが、「介護業界には違和感を感じる研修やセミナーが多い」というのも事実です。

あまりにも「対価以上の専門性とやりがい」を意識しすぎた介護業界の闇の部分なのかもしれません。

介護業界はまだまだ未成熟な業界です。 「介護業界の現状が許せない」 「高齢者が人として在るべき姿で生活出来るように」 ...

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