「介護の仕事は誰でもできる」などと言われたことが介護業界に波紋を広げたこともありましたが、実際問題「介護職の専門性」とは一体なんなのでしょうか。
この部分が明確ではないために「誰でもできる」という印象を持つ人も出てきてしまうことも否めません。
介護業界で働いている多職種の担当している専門分野は以下の通りです。
【各専門職の専門分野】
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確かに、この中で「資格が無くても行えるのは介護業務」になります。
今回は「介護職の専門性は一体なんなのか」ということについて記事を書きたいと思います。
介護職の専門性とは
そもそも、「介護職の専門性」を個人レベルで考えなければならない時点で、その存在自体が「危ういもの」である気がします。
本当に確立したものがあるのならば、介護職全員が声を大にして同じ答えが出せるはずですが、確立したものがないので個人の価値観や取り組み方や経験や能力で内容にバラつきが出てしまいます。
介護職員を試すように上から目線で「介護職の専門性を答えてみよ!」という質問をする人が出てくるのも特徴的です。
では、実際に「介護職の専門性」について具体的にみていきたいと思います。
介護福祉士会の見解
「公益社団法人日本介護福祉士会」の見解をご紹介します。
但し、「介護職の専門性」ではなく「介護福祉士の専門性」とされています。
介護福祉士の専門性
「介護福祉士の専門性」と言われることはよくありますが、その内容についてはっきり示されたものはありませんでした。 日本介護福祉士会では26年度、研修委員会において都道府県介護福祉士会からのご意見をもとに「介護福祉士の専門性」について明文化できるように検討しました。
【出典・引用元】公益社団法人日本介護福祉士会「介護福祉士の専門性」
介護福祉士会によると、介護福祉士の専門性は「より良い方向へ変化させるために、根拠に基づいた介護の実践とともに環境を整備することができること」とのことです。
そもそも、「介護福祉士の専門性」について「はっきりと示されたものがなかった」と書いてあります。
つまり、介護福祉士会でさえ、平成26(2014)年になってやっと考え出されたのが「介護福祉士の専門性」ということになります。
介護職に必要なスキルは?
介護職に必要とされるスキルは色々ありますが、一般的に言われるのが
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などです。
確かに、それらのスキルが備わっていれば「素晴らしい介護職員」と言えるでしょう。
しかし、よく考えればそれらのスキルはどの職種であっても当てはまるものです。
逆に言えば、それらのスキルを備えていれば、あとは資格さえあれば他の職種でも成功をおさめることができる人だと言えます。
もっと言えば、上記のスキルを全く備えていない人でも、介護職として働けてしまっている現状の方が問題なのではないでしょうか。
「自己犠牲」が必要不可欠な現状の問題点
今まで、利用者の幸せの追求や自己実現のために、介護職員が「自己犠牲」を払うことで何とか成り立たせてきた経緯があります。
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というような風潮がありました。
したがって、介護職に必要不可欠だったスキルが「自己犠牲」です。
段々とそういった風潮は淘汰されてきていますが、今も尚、自己犠牲を払う職員は存在しますし、そうしなければ業務が回らない職場環境があるのも確かです。
しかし、「職員の自己犠牲の上に利用者の自己実現」があり、「職員の不幸の上に利用者の幸福」があるという状況はとても不健全です。
この不健全な状態を改善していかなければ、本当の意味での自己実現は成し遂げられないでしょう。
介護職の専門性は「自己実現の支援」
介護職員は利用者への間接的直接的な介護によって、その自己実現を支援及び援助しています。
必要なスキルを駆使して(自己犠牲以外)、自己実現が達成されるように介護職は日々、状態の把握や介助などで支援を行っています。
もし、「介護職の専門性」をひと言で言い表すとすれば「自己実現の支援」と言えるのではないでしょうか。
最後に
今回は「介護職の専門性は「自己実現の支援」である」ということについて記事を書きました。
しかし、まだまだ「自己実現の支援」のために「自己犠牲」を払う必要があると考えている上司や事業所もあります。
そういう人達は、介護職の専門性を「自己犠牲」だと思っているのではないでしょうか。
業界全体で、職員の自己犠牲を排除した健全な「自己実現の支援」が行えるようになっていって欲しいと願います。