基本的にショートステイは、何泊か利用したのちに自宅へ帰ります。
ロングショートステイなどという本来のショートステイの在り方を逸脱した利用方法もありますが、基本的に利用者は帰ります。
日々、入所と退所が繰り返される中で起こりうるのが「忘れ物」です。
利用者の荷物を返し忘れてしまうことなのですが、忘れ物が無いように気を付けていても、完全にゼロにすることが困難な「永遠のテーマ」となっています。
今回は、ショートステイ永遠のテーマと言われている「忘れ物」について、ご家族様にもご理解を頂きたいことを記事に書きたいと思います。
ショートステイでの忘れ物
介護事業所での「忘れ物」は、日帰りサービスのデイサービス(通所介護)などでも発生しますが、その頻度は宿泊することになるショートステイ(短期入所生活介護)の方が多くなります。
滞在する時間の長さと、持ち物の量が圧倒的にショートステイの方が多くなるからです。
責任の所在
忘れ物と聞いたら「利用者本人が忘れて帰るもの」と思いがちですが、 介護事業所の場合は忘れ物の責任の所在は介護職員になります。
確かに、介護業界以外の「ホテルや旅館」「レジャー施設」「お店」などで忘れ物があった場合は、利用客自身のうっかりミスになりますが、介護事業所の場合は、利用者の荷物まで管理するのが「介護サービス」になるのです。
何故、発生するのか
何故、忘れ物が発生するのでしょうか。
当然、単純に「チェックが不十分で返し忘れた」というミスもあります。
しかし、認知症者の場合は行動の予測がつかず、目を離した隙に想像を超えるような行動をしたりすることがひとつの原因となります。
他人の物を自分のポケットやシルバーカーにしまい込む収集癖のある利用者もいれば、自分の物をパンツの中にしまい込む利用者もいます。
そういった状況が日常的に存在するのが介護現場なので、 ケアスタッフとして介入し管理しなければ、 利用者の荷物や持ち物はいともたやすく無くなります。
また、認知症が無い利用者であっても、歳相応の物忘れや思い込みがあり、忘れ物が発生してしまうこともあります。
どのパターンであっても全ては「介護職員の責任」ということになります。
凡ミスを誘発させる「時間との戦い」
単純に返し忘れというのは、 凡ミスですから注意して気をつければ無くせるはずです。
しかし、帰る日の退所直前に全ての利用者の荷物チェックをするのは時間的にも人員的にも困難です。
「退所者が数名いた場合、チェックする時間も人員もいない」のです。
1人の利用者の全ての荷物をチェックするのに、「大体10分~15分ほど」掛かります。
3人の退所者がいたら、「30分~45分ほど」掛かるのです。
極めて少人数の職員で回しているので、 1時間近くも荷物チェックに掛けていては他の利用者の対応が出来ません。
荷物チェックをしていて、現場の介護が疎かになり事故が発生してしまっては本末転倒です。
ですから、荷物チェックをしている途中で呼び出されたり、他の利用者の対応に掛かってしまうことになり、どこまでチェックしたのかわからなくなったり、荷物チェックに掛かれる時間が無くなってしまうこともあります。
そんな現状があるため、時間との戦いとなり「凡ミス」さえ誘発されやすい環境があるのです。
時間に余裕を持たせる工夫
時間との戦いでは、凡ミスが発生しやすくなるため、少ない人員で何とか時間に余裕を持たせるための工夫を現場で行っています。
例えば、前もって退所日の午前中や昼一番や手の空いた時にある程度やっておきます。
前日から既に退所に向けた荷物の整理をされている事業所もあるかもしれません。
しかし、早めにチェックすると、
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が発生します。
例えば
- 口腔ケア用品
- 利用者が排泄を失敗した際の着替えの衣類
などです。
その場合は、カバンから取り出した荷物を把握しておき、 職員間で情報を共有し、入れ忘れないようにします。
しかし、退所前のバタバタとした業務の流れの中で、入れ忘れてしまうこともあります(ヒューマンエラー)。
また、退所までに時間があればあるほど利用者も色々な動きをします。
ポケットのハンカチを洗面台に置き忘れたり、いつの間にか自分で下着を脱ぎ部屋のハンガーに吊るしていたりします。
日々、忘れ物のないように神経を尖らせていても、そういった様々な原因で忘れ物が発生してしまうのです。
ご家族様にご理解頂きたいこと
ショートステイで発生しがちな「忘れ物」について書いてきましたが、ショートステイの利用者の家族にもご理解を頂きたいことがあります。
現場は針のむしろ
忘れ物がありました際は、大変申し訳ございません。
しかし、業務を怠っていたり、能力が欠如していたり、気に掛けていないから忘れ物が発生するわけではありません。
欠如しているとすれば、それは「人員」「職員の人数」「チェックに与えられる時間」です。
現場職員は常にそういった「針のむしろ」のような環境で働いているのです。
権利者意識の強い家族
中には「お金を払っているんだから」というようなクレームを入れられるご家族様もいらっしゃいます。
権利者意識を振りかざすよりも、「忘れ物はあり得ること」だとご理解下さい。
もちろん、忘れ物が発生してしまったことは大変申し訳ないと思っています。
しかし、現状の介護現場では「忘れ物はゼロにはならない」のです。
認知症者も含め、高齢者が共同生活をしているわけですから、その辺はお察し下さい。
立場の弱い現場スタッフのマウントを取っても、萎縮してしまい人員不足に拍車が掛かり余計に忘れ物が増えてしまう原因にもなります。
以下の物はお持ちにならないで下さい
利用者本人が家族に内緒で持ってきている場合もありますが、以下の物は扱いに困ったり、管理に困りますので、お持ちにならないで下さい。
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最後に
今回は、ショートステイ永遠のテーマ「忘れ物」と、ご家族様にご理解を頂きたいことを記事に書きました。
忘れ物対策で「デジカメ」を活用されているところもあるようですが、ショートステイの場合は荷物が多いため、全てをデジカメで管理するのは難しいと感じています。
デジカメが活用できるポイントとしては、「持参した時から破れていたり破損している物」などを事前に撮影しておき、「入所中に破れたり破損したわけではない証拠や情報の共有」として残しておく方法です。
忘れ物を減らしていくポイントとしては「時間と人員の確保」が最優先です。
また、介護職員一同、出来るだけ忘れ物が発生しないよう努力をしています。
ご家族様にも理解を得ながら、より良い信頼関係の構築ができたら幸いです。