仕事には「足し算」のやり方と「引き算」のやり方があります。
足し算のやり方は「あれもした方がいい」「これもしなきゃ」「もっとたくさんやらなきゃ」といった具合に、業務の幅を広げたり量を増やしていく方法です。
一見、向上心があって働き者のように見えます。
引き算のやり方は「あれはやめておこう」「これもしなくていい」「もっと仕事を減らしていかなきゃ」といった具合に、業務の幅を狭めて量を減らしていく方法です。
一見、やる気がなくて怠け者のように見えます。
ですから、「足し算が良くて引き算は良くない」というイメージがありますが、実際は「足し算は良くなくて引き算は良い」という場合もあります。
今回は、リクエストを頂きましたので、足し算で仕事を増やしていく働き者の介護職と引き算で仕事を減らしていく怠け者の介護職について記事を書きたいと思います。
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足し算と引き算の介護職の実情
仕事を足し算していく介護職と引き算をしていく介護職の実情をみていきたいと思います。
足し算の介護職は働き者?
足し算をしていって、仕事の質を上げていこうとすることは良いことです。
介護現場においては、テキパキと動いてくれたり色々なことに気づいて提案をしたり、できるだけより良くしていこうと考えている介護職は働き者です。
但し、それは「足し算が可能な環境がある場合」に限られます。
介護現場では、時間や業務に追われたり「やりたくてもできない」という場合が多々あります。
そんな環境の中で「あれもやっていこう、これもやっていこう」と言って業務の幅や量を増やしていけば破綻してしまいます。
何故なら、時間も人員も限られている中で業務を足し算していくと負担がどんどん重くなっていき、限界を超えてしまうことで立ち行かなくなってしまうからです。
つまり、業務の幅や量が増えてしまったことで今までできていたことさえ満足にできなくなり、仕事の質が低下していく結果になるのです。
介護現場の現実をしっかりと見据えて適切な判断をした上でなければ「足し算はただの自分勝手な理想」になってしまいかねません。
引き算の介護職は怠け者?
引き算をしていって、どんどん仕事の量を減らしていくと最終的にはする仕事が無くなってしまいます。
自分勝手な考え方や好き嫌いで仕事を選り好みしている人は、人間性も疑ってしまいますし怠け者にしか見えません。
何故なら、勝手な引き算によって周りのスタッフに負担がいってしまうからです。
しかしその反面、介護現場全体で考えた場合は、適切な引き算も必要であると言えます。
限られた時間と人員の中で業務を行っているため、「業務の見直し」や「スマート化」は必要なことです。
逆に、それができていない介護現場の方が問題です。
引き算をすることで、「業務を減らす」というだけでなく、ひとつひとつの「業務の質を上げる」ことができます。
但し、これを個人レベルで判断してしまうとスタンドプレイになってしまったり、ただの怠け者になってしまうため、職場全体で引き算を検討していくことが大切です。
省略したいけど引き算できない業務
実は、介護現場には「省略したいけどできない」「引き算したいけどできない」という業務も意外とあります。
例えば、服薬介助の際の薬袋の「日付・朝昼夕・利用者名」などの記載の確認と、介助前に利用者の顔を見て利用者の名前を声を出して確認し(利用者に対してだけでなく自分に対して音読することで再確認の意味も含む)、その上で服薬を介助します。
この一連の流れは、慣れてくると省きたくなりますし、一見「時間の無駄」にさえ思われてしまいますが、これを怠るといつか「恐怖の誤薬」をしてしまうリスクが高くなります。
誤薬や服薬ミスをしないためにも私はこれだけは省きません(自分のためでもあります)。
他にも、オムツ交換の際のベッドの高さ調整も省きたくなりますが、これも引き算できません。
古いタイプの介護用電動ベッドだと、リモコンのスイッチを押しても反応が鈍かったりキーキーと耳障りな音を立てながら動くため、時間短縮のためにも省きたくなるのですが省けません。
何故なら、ちゃんと高さ調整をしないと腰に負担が掛かり腰痛になりやすくなるからです。
自分を守るためにも引き算はできません。
また、オムツ交換終了後は必ずベッドを元の高さに戻すことも引き算できません。
ベッドの位置を戻さずに高いままだと、もし利用者がベッドから転落した場合、怪我をしてしまったり怪我の度合いが強くなったりするからです。
たかが20cm~30cmでも全然違ってきます。
介護現場では、引き算できそうなことでも引き算ができない業務というのが結構あるのです。
最後に
今回は、足し算で仕事を増やしていく働き者の介護職と引き算で仕事を減らしていく怠け者の介護職について記事を書きました。
介護職個人レベルで見れば「足し算は働き者で引き算は怠け者」と言えるのかもしれませんが、職場全体で見た場合はそうとも言い切れない部分があります。
どちらかと言えば、引き算をした方が業務の質は上がっていくのではないでしょうか。
個人的には頻度が多すぎる行事は引き算して欲しいところです。