介護の判断基準が「上司に怒られるか怒られないか」になってしまう実情

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介護現場では「利用者本位」や「パーソン・センタード・ケア」や「ユマニチュード」など様々な対人援助法やメゾットが採り入れられています。

しかし、教科書上の理屈は理解できるものの、実際の介護現場ではなかなか実践が困難であったりするのも事実です。

もうそれは現場レベルでどうこうできるものではなく「事業所単位」「業界単位」「国レベル」で再検討が必要なのですが、相変わらず「現場職員からできることをやっていこう」などと随分前から念仏のように唱えているのが実情です。

恐らくこういった体質はこれからも変わっていかないことが予想されます。

何故なら、「変わった試しがないから」です。

それだけでは根拠としては弱いかもしれませんが、例えば「少子高齢化問題」であっても、50年ほど前から推計で懸念されていたにも関わらず、何の有効な手立ても取られないまま現在に突入していることを考えれば、「介護職員の人員不足」だとか「2025年問題」だとかもこのまま有効な手立てなく突き進んでいっても何の不思議もない国家なのです。

さて、そういう実情の中で働いていると現場職員も理想と現実の狭間で悩み、不健全な環境に適応をしていかないと働き続けられないというリアルな現実があります。

今回は、介護の判断基準が「上司に怒られるか怒られないか」になってしまう実情について記事を書きたいと思います。

「幸せ」と言うと、とても抽象的な言い方なので、その定義も人それぞれだと思います。 心が満ち足りていれば幸せを感じるわけですが、...

介護現場での判断基準は「怒られるか怒られないか」

基本的に多くの介護事業所では「利用者最優先」という方針です。

しかし、そうは言ってもそれでは業務が回らない現実があったり、そもそも利用者の全てのニーズに応えられるような制度でも環境でもないために「板挟みになった介護職員が苦しむことになる」のです。

ちなみに、介護業界以外の会社であっても結局は「上司の顔色を見て働く」「判断基準が怒られるか怒られないか」という状況はあり得ますが、この記事では「制度や環境」と「現実」との板挟み感がより強い介護業界の実情についてご紹介していきます。

人員不足の問題

介護現場は常に人員不足です。

そもそも「人員配置基準」を満たしていても人手が足りない摩訶不思議な業界なのです。

そんな人員不足の環境の中で、理想に踊らされていると自分の身が持ちませんし、利用者のことを思ってやったことでも上司などから注意されたり揚げ足を取られてしまうことがあるため、判断基準を「上司に怒られるか怒られないか」という考え方にシフトしていかざるを得ないのが実情です。

自分の思い通りにしたい上司の存在

色々な上司がいますが、中には「自分が法律」「自分の言うことが全て正しい」「自分の思い通りにしたい」という自己中心的な上司も存在します。

そういう上司がいる場合は、利用者よりもその上司の方針に合わせなければ働き続けることが難しくなってしまいます。

つまり、介護の判断基準が「怒られるか怒られないか」というものになってしまうのです。

どの業界、どの職場でも「お局さま」と言われるような人が存在するでしょうが、介護事業所にはお局職員の存在率が高い傾向にあります。 ...

視線の先は制度や行政

介護保険制度上、「利用者本位」ということになっていますが、矛盾点が沢山あります。

例えば、入浴拒否をする利用者であっても週2回以上入浴(又は清拭)をしなければ減算になってしまったり、利用者が「家に帰りたい」と言ってもそうはいかない現実があります。

監督権限を行政が持っているために、「利用者のためというよりは行政に突っ込まれないための介護」になってしまっています。

事業所の視線の先には利用者よりも制度や行政があります。

そうなると、介護の判断基準は「怒られるか怒られないか」という不健全な状態になってしまうのも当然です。

「そこは介護技術で何とかするべき」「それを上手く調整するのが介護の専門性」という反論もあろうかと思いますが、「言うは容易く行うは難し」という言葉の通りで、まずはお手本を見せて頂きたいところです。

そもそも、「最低の待遇で最高のサービスを求めること自体があまりにも図々しい」のではないでしょうか。

介護業界では、これまで「職員の資質の向上」だとか「利用者本位」という名のもとに、利用者に対して至れり尽くせりのサービスの提供を推進し...

生き残るために仕方なく

前述してきたような実情の中で働いていれば、介護職員としても働き続けるために仕方がなく「怒られるか怒られないか」を判断基準としてしまうことになります。

しかし、それはそれで介護職員が責められてしまう要因ともなります。

介護職員だって「怒られるか怒られないか」ということを基準とすることは不健全であることは重々承知しているのですが、「板挟み状態」「四面楚歌」「フルボッコ」の環境の中では、苦肉の策としてそういう判断基準を持ってしまうことはあってもおかしくないのです。

それをしなければ生き残れないのです。

そして介護職員を責めるばかりではなく、そういう環境や制度になってしまっている現実に目を向けていく必要があるのではないでしょうか。

それができない間は、こういった「怒られるか怒られないか」を判断基準とするような摩訶不思議な状態が続いていくことでしょう。

最後に

今回は、介護の判断基準が「上司に怒られるか怒られないか」になってしまう摩訶不思議な実情について記事を書きました。

こういった状況は、毎日汗水垂らして一生懸命働いている人ほど陥りやすくなります。

何故なら、働けば働くほど現実が鮮明に見えてくることと、そもそも歩いた距離(働いた頻度や頑張り)が長いほどつまずく回数が多くなるからです。

そして、自分のそういう不健全な考え方に葛藤したり自己嫌悪に陥ったりします。

こういった基準で考えてしまう介護職員が悪いのではなく、そこまで追い詰めてしまった事業所や業界や国がもっと介護職員をフォローできるような体制づくりをしていかなければならないのではないでしょうか。

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