平成24年介護保険法改正でサビ残の強要などの労働法規違反をした介護事業所は指定の取消しという建前

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平成23年に改正され平成24年4月1日から施行された介護保険法(以下、平成24年介護保険法改正と呼ぶ)の改正ポイントの1つに、「介護事業所における労働法規の遵守を徹底、事業所指定の欠格要件及び取消要件に労働基準法等違反者を追加」という労働者にとっては大変ありがたい内容のものがあります。

【出典】https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/gaiyo/dl/k2012.pdf

これは介護人材の確保と介護サービスの質の向上を目的としたもので、介護事業所が介護職員等にサービス残業の強要などをして労働基準法違反をした場合は介護サービス事業者としての指定が取消されるというものであるように受け取ることができます。

確かに労働基準法には以下のように規定されており、罰則(懲役刑や罰金)もあります。

第五条 使用者は、暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によつて、労働者の意思に反して労働を強制してはならない。

第百十七条 第五条の規定に違反した者は、これを一年以上十年以下の懲役又は二十万円以上三百万円以下の罰金に処する。

【引用元】労働基準法

介護職員等にサビ残を強要したり労基法に抵触するような運営をしていた介護事業所は戦々恐々としたことでしょう。

ですから、徐々に介護現場でのサビ残の強要は減っていっていますし、労働法規の遵守が意識されるようになってきました。

しかし、その副作用としてステルス残業と呼ばれる隠れ残業の温床となっていたり、まだまだ根強く労基法違反が黙認されていたり暗躍しているのも事実です。

その原因は、

  • 介護職員が責任感で自主的にサビ残をしてしまう
  • やりがいという名の労基法違反がスタンダードな業界
  • 介護職員等の無知につけ込んだ運営が常態化
  • 介護報酬が少なすぎて今以上の人件費を支払えない

などが挙げられますが、追加された介護保険法の条文を確認すると「労働法規に違反しても即指定の取消しになるわけではない」ということがわかるため、これも原因の1つと言えるでしょう。

もっと言えば、「余程のことがない限り指定の取消しにはならない建前感が非常に強い条文になっている」のです。

今回もリクエストを頂戴しましたので、「平成24年介護保険法改正でサビ残の強要などの労働法規違反をした介護事業所は指定の取消し」ということについて、その条文と条文の意味することをご紹介したいと思います。

常に人員不足の介護現場では、60分間の休憩が取れないことが多いです。 昼ごはんをかき込むように食べ、10分か15分で現場に戻り...

平成24年介護保険法改正でサビ残の強要などの労働法規違反をした介護事業所は指定の取消しという建前

平成24年の介護保険法改正で労働法規違反における指定の取消し等について追加された条文は以下になります。

※指定居宅介護サービス、指定地域密着型サービス、介護老人保健施設などサービス形態ごとにそれぞれ条文が追加されていますが、どれも同じ内容なのでこの記事では指定介護老人福祉施設(特養)の条文をピックアップしてご紹介します。

第八十六条二項 都道府県知事は、前項の申請があった場合において、当該特別養護老人ホームが次の各号のいずれかに該当するときは、第四十八条第一項第一号の指定をしてはならない。

三の二 当該特別養護老人ホームの開設者が、労働に関する法律の規定であって政令で定めるものにより罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなるまでの者であるとき。

三の三 当該特別養護老人ホームの開設者が、健康保険法、地方公務員等共済組合法、厚生年金保険法又は労働保険の保険料の徴収等に関する法律の定めるところにより納付義務を負う保険料、負担金又は掛金について、当該申請をした日の前日までに、これらの法律の規定に基づく滞納処分を受け、かつ、当該処分を受けた日から正当な理由なく三月以上の期間にわたり、当該処分を受けた日以降に納期限の到来した保険料、負担金又は掛金の全て(当該処分を受けた者が、当該処分に係る保険料、負担金又は掛金の納付義務を負うことを定める法律によって納付義務を負う保険料、負担金又は掛金に限る。)を引き続き滞納している者であるとき。

【引用元】介護保険法

上記の通り、追加された条文は介護保険法「第86条2項3号の2」と「第86条2項3号の3」の2つです。

つまり、この2つが新たに追加された「指定の欠格要件」になるわけですが、欠格要件ですから既存の指定の取消し以外にも新規の指定もダメ、指定の更新もダメという要件になります。

長々と条文をご紹介しましたが、以下で噛み砕いて見ていくと建前感の強さが理解できるかと思います。

介護保険法第86条2項3号の2

「当該特別養護老人ホームの開設者が、労働に関する法律の規定であって政令で定めるものにより罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなるまでの者であるときは指定の欠格要件になりますよ」という条文ですが、非常に難解な言い回しになっています。

噛み砕いて言うと、「特養の開設者が労働法規に違反して罰金刑になった場合、その罰金を支払わない間は指定が取消される要件に該当しますよ」という意味です。

逆に言えば、罰金を払ってしまえば刑の執行は終わり刑の執行を受けることがなくなるのですから指定の欠格要件には該当しません。

ここでわかるのは、「罰金をいつまでも放置する人はまず居ない」つまり「多くの場合は指定が取消されることはない」ということです。

労働法規に違反して罰金刑になっても、速やかに罰金を払えば指定の取消しにはならないのですから非常に建前感が強い条文だと言えます。

介護保険法第86条2項3号の3

長たらしく書いてありますが、この条文を噛み砕いて言うと、「特養の開設者が各種社会保険や労働保険の保険料を支払わずに督促や財産の差押えを受けた上に、尚且つ、その日から更に正当な理由がなく3か月以上保険料を滞納していた場合は指定の欠格要件になりますよ」という意味です。

「そりゃそうだろ」という感想しか出てきません。

社会保険料や労働保険料を延々と滞納して差押えまで受けてしまっているような介護事業所があるとするならば、指定の取消し以前に法人や組織として経営上破綻、崩壊しています。

もちろん、ごく稀にそんな悪質又は余程ぬけ作な介護事業所があるのかもしれませんが、大部分の介護事業所にはほぼ無関係の条文と言ってもいいでしょう。

介護人材の確保やサービスの質の向上という元々の目的から考えると建前感が否めません。

最後に

今回は、リクエストにお応えして「平成24年介護保険法改正でサビ残の強要などの労働法規違反をした介護事業所は指定の取消しという建前」について記事を書きました。

まとめると、

  • 改正で追加された条文は介護保険法「第86条2項3号の2」と「第86条2項3号の3」の2つ(特養の場合)
  • 労働法規における罰金が未納のうちは指定の欠格要件に該当する
  • 各種保険料の長期滞納者は指定の欠格要件に該当する
  • 罰金未納者や各種保険料の滞納者は指定を取消されて当然なので条文自体が建前
  • 「介護人材の確保とサービスの質の向上」という目的と追加条文の内容が見合っていない

ということになります。

介護人材の確保とサービスの質の向上という目的の達成にはまだまだ程遠い建前上の条文が追加されたことは、労働者としては「一歩前進」と見ればいいのか「建前すぎて逆に失望絶望」と見ればいいのか、非常に複雑な心境にさせてくれる改正であったと言えます。

社会情勢の変化もありコンプライアンスの遵守が厳しくなってきましたので、労働法規の遵守とともにサビ残も減ってきてはいますが「やりがいという名のステルス残業」が暗躍する温床にもなっている点も気になるところです。

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コメント

  1. デイちゃん より:

    ありがとうございました。
    そうなんですか、サビ残強要=指定取り消しじゃないんですね・・・。
    まあサビ残を強要する管理者がいたら、「平成24年の介護保険法の改正を知らないんですか?サビ残強要は立派な労働基準法違反ですが、労働基準法違反で罰金刑となったら、指定取り消しになる可能性があるんですけど、大丈夫ですか?人件費削るどころか、営業停止になって売り上げ0になりますよ?」程度には言えそうですね。ww

    • アバター画像 介護職員A より:

      >デイちゃんさん

      こんばんは~
      リクエストありがとうございました^^

      そうですね、その言い方で間違っているわけではないのでOKだと思いますよ^^