福岡県の保育園の副園長が園児に暴行して傷害容疑で逮捕されたというニュースが流れてきました。
また、その副園長が就任した2011年頃から保育士の退職者が60人以上にのぼるとのことです。
保育業界での事件ですので、介護とは関係はないのですが、保育業界と介護業界はよく似ている部分があります。
よく言われるのが、従業員の待遇や将来性や劣悪な職場環境です。
今回は、この保育業界での事件で見える介護業界との類似性について記事を書きたいと思います。
介護業界との類似性
“恐怖の副園長”園児に暴行で逮捕 保育士も60人以上辞めた保育園の実態とは?
- 子どもの頬が腫れていることに気づいた保護者が被害届
- 清原容疑者をめぐって、市に4年間で11件もの相談が
- 保育士も大量に退職
【引用元】FNN PRIME
事件の詳細については、上記ニュース配信元よりご確認下さい。
この事件について介護業界との類似性を見ていきたいと思います。
類似性①「副園長は園長の娘」
容疑者の副園長は、園長の娘のようです。
つまり「同族経営」ということになります。
介護業界にも特に社会福祉法人ではこういった同族経営の法人も多いのではないでしょうか。
同族経営そのものが悪いのではなく、
- 何の知識や経験もないのに経営権を握るため現場が混乱する
- 下積みがないので現場の苦労がわからない
- 経営学を学んでおらず気分や感情で運営する
- 独裁的なワンマン経営になりやすく法人を私物化する
- そもそも人格破綻している人物が経営権を握る
ということが問題になります。
上記に当てはまるような人物が経営権を握ってしまうと「全員が不幸」です。
特に、福祉業界では公正中立を強く求められるのですから尚更問題です。
事業所の経営陣の人事についてもある程度の基準が必要ではないでしょうか。
類似性②「多量の退職者」
今回の事件では2011年から60人以上の保育士が退職しているとのことです。
約8年で60人だとすれば、単純に平均計算すると1年間で約7人~8人の退職者が出ていることになります。
異常事態かのように見えますが、「介護業界では普通にあり得る退職人数」です。
「ちょっと多いかな」とは思うものの、「異常事態と言えるほどの退職者数ではない」ということになります。
もし、この人数を異常事態だと言うのだとすれば「介護業界はおしなべて異常事態」です。
そして、退職者数で緊急性を測るとすれば「既にSOSが出まくっている状態」だと言えます。
類似性③「排他的閉塞的」
保育園などは防犯も兼ねて物理的にも外部の人が勝手には入れないようになっていますし、介護施設でも家族の面会はあるものの外部の人が現場まで入ってくることはあまりありません。
逆に、内部の職員や園児や利用者も自由に外に出れるということもありません(休憩中であってもです)。
組織内の自治は経営者の方針に委ねられているため、排他的で閉塞的な空間だと言えます。
つまり、外部の声は内部には届きにくく、内部の声も外部に届きにくいのです。
この環境によって、経営者の独裁的な恐怖政治を増長させてしまう可能性が高くなります。
今回の事件では、市に4年間で11件もの苦情が入っていたにもかかわらず、結局は野放し状態だったわけですから、やはり「排他的閉塞的」であると言えます。
行政の介入がもっと早く的確適正であれば「職員も利用者も救われる」という状況は介護現場にもあります。
排他的閉塞的な業界であることを証明してしまった行政の責任も問われてくることでしょう。
類似性④「目立ちたがる」
今回の事件の容疑者である副園長は、YouTubeで保育園の紹介動画を出していたようです。
保育園や法人や事業所の紹介をすることは悪いことではありませんが、福祉業界・介護業界の経営者には「目立ちたがり屋」が多いように感じています。
厳密には、そういう人はごく少数であるが故に目立とうとしている人が逆にひときわ禍々しく目立って見えるのかもしれません。
メディアに映し出されていたり脚光を浴びる場で特に目立っているのは、事業所の理念や方針や支えてくれている人達を差し置いて「大体が自分」です。
事業所の紹介という名の自分の紹介アピールなのです。
とにかく自分が大好きなのです。
もちろん、経営者として顔を売ることも大切でしょうが、そこには「こんな素晴らしい理想を語っている私を見て欲しい」という欲望とメサイアコンプレックスが透けて見えてしまう点で類似していると言えます。
類似性⑤「表面上は素晴らしいことを言う」
今回の事件の容疑者である副園長は、YouTubeでの保育園の紹介動画では素晴らしいことばかり言っていたようです。
保育業界であれ介護業界であれ、目指すべき理想は「素晴らしい桃源郷」でしょう。
ですから口から出てくる言葉の全ては「素晴らしいこと」になる点が類似しています。
しかし、その「素晴らしい内容」が誰かの犠牲の上に成り立っているのだとすれば、それは「綺麗ごと」です。
表面上は素晴らしいことを言っていても、裏で誰かを泣かせているのだとすれば本末転倒です。
介護業界もよく似ているのではないでしょうか。
最後に
今回は、保育業界で発生した事件から読み取れる介護業界の類似性について記事を書きました。
今回の保育園の事件で被害に遭った園児たちの身体的な外傷だけでなく心の傷のケアも心配です。
表には出てこないだけで、その下で働いていた保育士の方々の苦労や被害も数え切れぬほどあったのではないでしょうか。
以前、介護業界でも老人ホームの施設長が、職場での優位性を背景に職員にトイレブラシを舐めさせるなどの行為を強要しパワハラ認定されたという事件もありました。
こういった職場での立場の優位性を背景にした「理事長」「施設長」「園長」「副園長」などからのパワハラ被害は氷山の一角であるという点で類似していると言えるのではないでしょうか。