今日も明日も介護現場は人員不足なわけですが、人員不足の起因となるのは
- 新しい人材が入ってこない(入職率)
- 今いる職員が辞めていく(離職率)
- 上記の両方
のいずれかになるかと思います。
介護業界の離職率の高さは有名ですが、最近の統計では他産業との差は縮まりつつあるとされています。
確かに数字だけを見ればその通りなのですが、そもそも「入職者が少ないのだから離職率が下がるのは当然」「福祉業界は医療業界とセットで統計が取られているので福祉業界単独での統計ではない」という点には注意が必要です。
「数字は嘘をつかないが、嘘つきは数字を使う」という言葉もあるように、何事も過信してしまうことは危険ですし「現場には数字だけでは読み取れない実情がある」というのも事実です。
リアルな介護現場で特徴的なのは、「介護リーダー(ユニットリーダー)などの中間管理職が普通に辞めていく」という現象です。
今回は、その理由について記事を書きたいと思います。
介護(ユニット)リーダー等が続々と辞めていく5つの理由
中間管理職は、介護業界以外の一般企業であれば更なる出世や有望な将来性が見込まれる立場です。
しかし、介護現場では中間管理職である介護リーダーやユニットリーダーの退職が後を絶ちません。
その理由について解説していきたいと思います。
理由①「頭打ち」
介護現場では、出世や昇格と言っても介護リーダーやユニットリーダーで頭打ちです。
その上にせいぜい介護主任(又は課長や部長)があるくらいです。
特別な努力をしたり棚からぼたもち的にそれ以上のポストに就ける可能性もありますが、スタンダードではない上に可能性は相当低いと言えます。
つまり、中間管理職として介護リーダーをずっと続けていくくらいしか道がありません(一般企業で言えば「万年係長」のような状態)。
しかも、特に何も悪いこともしていないのに、ある日突然降格させられる可能性さえ秘めているのが介護リーダーやユニットリーダーというポストです。
ですから、
- 立場が不安定
- 将来性がない
- 魅力がない
- モチベーションが保てない
- ステップアップしにくい
などの理由から「辞める」という判断に至ってしまっても致し方が無いポジションだと言えます。
理由②「名ばかりリーダー」
介護リーダーやユニットリーダーは、とりあえず在籍さえしていれば誰でもなれます。
何故なら現状では資質や能力よりも「リーダーというポストを埋めるだけの名ばかりの役職」に過ぎないからです。
実際の介護現場では、リーダーをやっている人が辞めていったり、ユニット編成や異動が行われるたびにリーダーの首はすげ替わります。
つまり、「介護リーダーやユニットリーダーは日替わり弁当のようなもの」なのです。
名ばかりの日替わり弁当なのに、責任は一般介護職より重く圧し掛かってきます。
雀の涙ほどのリーダー手当では「割に合わない」ことでしょう。
そんな状況に耐えきれなくなったリーダーが辞めていくのは自然の摂理と言えます。
理由③「誰も助けてくれない」
日替わり弁当のようなリーダーになってしまった場合、責任だけは押し付けられるため、やりがいがある反面プレッシャーも強く感じます。
頑張っても頑張っても上手くいかず空回りをしたり、現場がまとまらず右往左往して疲労困憊の毎日では自己嫌悪に陥ってしまいます。
上からは圧力を掛けられ、下からは突き上げられます。
そういった板挟み状態になってしまうのは中間管理職の宿命ではあるのですが、多くの場合は「フォロー体制」が確立しておらず、誰も助けてくれません。
自分より上の上司に「介護リーダー(ユニットリーダー)を降りたい」と希望しても聞き入れてさえもらえず、最終的には逃げるように辞めていくことになってしまうのです。
理由④「自分には向いていないと気づく」
押し上げられてリーダーになったものの、やっていくうちに「自分には中間管理職は向いていない」と気づくと辞めたくなります。
しかし、実際は中間管理職に向いていないのではなく「割に合わない」「ストレスを強く感じる」「フォロー体制がない」という現実に耐えられず、それらに耐えられる人と比べると「向いていない」ということになります。
つまり、現状の介護リーダーやユニットリーダー等の中間管理職に求められているものは「自己犠牲」なのです。
自己犠牲ばかりを求められる環境では、リーダーから先に辞めていくことになっても何の不思議もありません。
理由⑤「そもそもなりたくなかった」
そもそも、初めから介護リーダーやユニットリーダー等の中間管理職にはなりたくなかったのに、否応なしにさせられることになれば「常に辞めたい気持ちでいっぱい」でしょう。
望んでもいないのに肩書きをつけられ、責任を負わされ下から突き上げられるのですから堪りません。
今まで、何の不満もなく与えられた環境の中で自分が出来ることを淡々とこなしていたのに、急に「クリエイティブな介護」だの「ユニットのカラーを出せ」だの言われ、めまいと吐き気がしてきます。
理想は良いですが、地盤がゆるゆるのガタガタ状態のままの現実を無視して話が飛躍していくために「砂上の楼閣」を築いていくことになります。
そんな状況では、リーダーは砂上の楼閣とともに音を立てて崩れていくことでしょう。
最後に
今回は、介護リーダーやユニットリーダーなどの中間管理職が続々と辞めていく5つの理由について記事を書きました。
介護リーダーやユニットリーダーのみならず、介護主任でさえもあっけなく辞めていってしまうような業界です。
その姿は「自分の遠くない将来を暗示している」と言っても過言ではありません。
つまり、「中間管理層の職員の退職が続出している介護事業所はヤバい」と言えます。
沈没する前の船からネズミが1匹も居なくなる(逃げ出す)理由は、ネズミが不協和音を感知しているからだと言います。
不協和音が鳴りやまない介護事業所からは早めに逃げ出すのが吉でしょう。