大阪市の特養で寝たきりの女性利用者3人が相次ぎ肋骨骨折「事件性の疑いもあり府警が捜査」考察

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大阪市の特別養護老人ホーム(以下、特養)で、寝たきりの女性入居者3人が相次いで肋骨骨折をする介護事故が発生したため、その状況を問題視した大阪市が施設に立ち入り調査を行い、事件性の疑いもあるということで市と施設が大阪府警に通報し捜査が始まった、というニュースが流れてきました。

確かに、利用者が何らかの理由で骨折する介護事故はあり得る話ですが、それが3件も同じ個所(肋骨)の骨折が続き、その全ての利用者が自分では動くことのできない寝たきりの利用者であれば事件性を疑う余地が十分にあると言えます。

また、1件目と2件目の肋骨骨折については、特養側から市に報告していなかったという事実もあり、施設としての運営体制やコンプライアンスにも首を傾げてしまう点があります。

以下で詳しく考察していきたいと思います。

大阪市の特養での寝たきり女性利用者3人連続肋骨骨折考察

では早速、大阪市の特養で女性利用者3人が連続で肋骨骨折が発生した件について考察していきます。

概要

状況から見て事件性が疑われるのは明らかなのですが、まだ事実がわからない以上は「介護事故」になるのか「介護事件」となるのかは定かではありません。

以下が概要になります。

発見状況と受傷利用者

発見日 受傷利用者 状況
2019年11月9日 90代女性 肋骨骨折(市に報告していなかった)
2019年11月23日 50代女性 肋骨骨折:入浴時発見(診断した病院が市に報告、市が調査に入り特養に報告書の提出を求める)
2019年12月1日 80代女性 肋骨骨折:着替えの際に発見(特養から市に報告、特養と市が大阪府警に通報)

上記3人はいずれも意思疎通が図れない状態で認知症がある寝たきりの利用者(2020年3月1日現在、2人が入院中)。

2020年1月にも別の90代女性利用者(寝たきり)の腰にあざがあり打撲と診断。

特養の状況

  • 5階建て施設で入居者は2階~4階で生活
  • 利用者数約120人、職員数約60人
  • 肋骨骨折した3人と打撲した1人の計4人はいずれも2階フロアの共同部屋(多床棟)で生活
  • 施設の責任者「歩ける人が転倒して骨折することはあるが、寝たきりの入居者の骨折は過去にはなかった。原因が分からず、捜査に全面的に協力する」

市に報告をしなかった特養のコンプライアンス

介護事故が発生した場合は、市区町村などの行政へ事故報告書の提出が必要です。

地域ごとに提出期限(事故発生から何日以内に提出)が努力義務として定められていたり「出来るだけ早急に」という形になっていたり様々でしょうが、この事故報告書を作成するのは多くの場合「発見者」です。

つまり、第一発見者が介護職員になることが多いため、多くの場合「介護職員が事故報告書を作成」することになります。

ここで特筆しておきたいのは、「介護職員が当日作成しても行政に届くまでに少なくとも1週間は掛かる」ということです。

何故なら、

介護職員が事故報告書を作成し上長のチェックを受ける→訂正や修正などがあれば差し戻し→訂正して再提出→リスクマネジメント委員会や多職種の上長などのチェックを受ける→訂正や修正などがあれば差し戻し→訂正して再提出→管理者や施設長の決裁→生活相談員などが行政へ提出

という流れを踏むからです。

この流れの中で、チェックする職員や報告書を作成した職員が公休で即日チェックや修正ができなかったり、そもそも作成した介護職員が現場業務に時間を取られ報告書の訂正や修正する時間が取れないという問題があります。

詳しくは下記記事をご参照下さい。

介護職員は介護を行う仕事ですが、実際に働いてみるとその書類仕事の多さに驚きます。 利用者の日々の生活の記録だけでなく、モニタリ...

また、やっと完成した事故報告書を提出しようと思っても、それが土日であれば行政が休みであるため提出は週明けになります。

ですから、どんなに早くても提出までに1週間前後は掛かってしまうのが介護現場の事故報告書の実情です。

もちろん、この流れをもっと簡略化したり効率化してスムーズに提出できるよう業務改善を検討していくのも介護施設の使命でもありますので、上記のやり方が全てではないということは申し付け加えさせて頂きます。

さて、話を戻しますが「事故報告書の提出には時間が掛かるから提出していなかったのは仕方がない」と言っているわけではありません。

そもそも、「提出しようとしていたが未だ決裁に至らない状態で提出が遅れていたのか、それとも全く提出する気がなかったのか」が問題になります。

どちらも良くない状況ではあるのですが、後者の場合は特養のコンプライアンスが欠如してしまっていると言えます。

では、前者であれば百歩譲って仕方が無いと言えるのかというとそうでもありません。

行政への報告には事故報告書の他にもう1つあるからです。

それが高齢者虐待防止法に基づく「虐待通報」です。

これは、高齢者に対して虐待が疑われる場合に事業所や職員に課せられている通報義務です。

恐らく、2件目の肋骨骨折で病院が市へ通報したのは事故報告ではなくこちらの虐待(疑い)の通報になろうかと思われます。

つまり、虐待通報の場合は書類や報告書を作成したり決裁を得なくても電話などで即座にできるのです(というか通報しなくてはならない義務です)。

特養側(及びそこで働く職員)は、この虐待通報さえ怠ってしまったという点で「どちらにしてもコンプライアンスに問題があるのではないか」ということになります。

もちろん、「骨折が連続発生したからと言って即座に虐待だとは言い切れない」「自分の施設で虐待の疑いがあるということを自らの口からは言い難い」という気持ちを持ってしまうこともあるのは事実でしょう。

しかし、「寝たきりの利用者」「短期間で連続して肋骨骨折」という状況があれば、冷静に考えれば「ひょっとしたら…」という気持ちがあったのも事実ではないでしょうか。

診断した病院は冷静に「ひょっとしたら…」と感じたから通報したのでしょうから、報告をしていなかった特養の落ち度であると言っても過言ではありません。

このことから得られる教訓は、「ひょっとしたら」を見逃さない体制づくりがコンプライアンスの遵守に繋がるということです。

高齢者虐待防止法や虐待防止研修の必要性については下記記事にまとめていますのでご参照下さい。

介護職員には虐待防止研修が必要だと思っています。 厳密に言えば「養介護事業又は養介護施設で働く従事者全て」に必要です。 ...

事故なのか事件なのか

今回の件が事故なのか事件なのかは捜査が進み、もっと詳しい状況や事実が解明されていかなければわからないことですが、やはり冷静に考えて

  • 寝たきりの女性利用者ばかり(自力移動ができないのだから受傷する原因の多くは外部からの力が加わった場合と考えられる)
  • 短期間で連続発生
  • 全員が肋骨骨折
  • 全員が同じ2階フロアで生活

という状況から事件性を強く疑ってしまいます。

もし事件ではなく事故である場合は以下の発生原因が考えられます。

  1. 未知の不可抗力
  2. 利用者自身の体動で受傷
  3. 移乗時に受傷

以下で詳しく解説していきます。

1.未知の不可抗力

介護現場では想像を遥かに超えることが発生したりします。

もちろん、実際には何か原因や要因があるのでしょうが、監視カメラなどでその現場を抑えない限りは何か未知なる不可抗力が働いたようにしか見えないことがあるのも事実です。

また、本当の意味の不可抗力としては、例えば大きな地震がありベッドが激しく揺れた際に利用者の体がベッド柵などに当たり受傷してしまう等のケースが考えられます。

介護職員が利用者に対して虐待をしたり暴行をするなどの事件のニュースが後を絶ちません。 その対策のひとつとして「介護施設に監視カ...

2.利用者自身の体動で受傷

寝たきりの高齢者はピクリとも動かないと思われるかもしれませんが、実際は手足や頭などを多少なりとも動かせる人も沢山います。

ですから、例えば自分の手でベッド柵をつかんで体を動かした際にベッド柵にぶつけて受傷したり、寝返りをするだけでも骨折してしまうというケースも全くないわけではありません。

もっと言えば、くしゃみや咳をするだけでも肋骨を骨折するケースもあるようです。

3.移乗時に受傷

寝たきりの利用者を移乗するのはそうでない人を移乗する時よりも技術が必要になります。

今回の特養では、どういう移乗方法をしていたのかはわかりませんが、もしも一人介助で移乗をすると介護職員の労力と腰への負担は相当大きくなりますし、利用者を受傷させてしまう可能性も高くなります。

ですから、二人以上の介助で「人力のリフト移乗」「タオル移乗」をしていくことがより安全性が高くなるのですが、この移乗方法でも職員間の息が合っていないと利用者に受傷させてしまうリスクは十分にあり得ます。

もちろん、機械のリフトを使用すればお互いがより安全ですが、まだ導入していない(導入するつもりもない)、導入しているが使用していない(倉庫の肥やし)という介護施設も多いのではないでしょうか。

詳しくは下記記事をチェックしてみて下さい。

介護職員の職業病の代表的なものとして「腰痛」があります。 これまでの日本の介護では「正しい介護技術があれば腰痛は防げる」といっ...

例えば、ベッドに利用者の体をおろした際に「ドスン」と降ろしてしまうと骨折などのリスクがあります。

高齢者の骨はもろくなっているので、少しの衝撃でも圧迫骨折やその他の骨折や打撲になってしまいます。

この場合も「介護事故」ということになりますが、今回は既に警察が介入しているので、ひょっとしたらこのケースの場合は「業務上過失傷害」という刑事責任を問われる「介護事件」となる可能性もあり得ます。

最後に

今回は、「大阪市の特養で短期間に女性入所者3人が次々と肋骨骨折したために事件性の疑いがあり大阪府警が捜査を始めた」という報道について考察しました。

事故である可能性も否定できませんが、状況から見て事件の可能性が高いように思います。

どちらにしても、介護従事者として「ひょっとしたら」を見逃さないようにしていきたいと改めて思う次第です。

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コメント

  1. デイちゃん より:

    私のデイの利用者が先日ショートに行ったんですが、ショートの後にデイに来た時、胸に大きな内出血がありました。
    すぐにケアマネがショートに問い合わせたところ、「うちでなったんじゃないです。スタッフにも聞いたけど全く心当たりがないとのことです。」の一点張り。
    でもその後診察した医者が、地域では有名なヤブ医者で(ヘルペスを湿疹って言うようなひどいレベル)、「これは骨折はしてない」って診断。
    「は?レントゲンとかとった?あんたの目は透視能力でもあるの?」って感じなんだけど、結局「骨折ではない」ってことで、そのままになってます。
    しかしその後3日くらいして、胸のところがぷくーっとふくれてきたの。これ、骨折した骨とかから出てきた血がたまってんじゃないの?って感じだけど、医者も穿刺ドレナージとか何もしない。で、2週間たった今もふくれたままなんですが・・・。
    その利用者はショートから帰ってきて、ごはんが食べれなくなり、そのヤブ医者が「もう看取りです」って言い出したんだけど。
    「違うでしょ?ショートでの事故が原因じゃね?治療すれば改善するんじゃね?」と思いますが、家族的には早く逝ってほしいのか、そのまま看取りに移行になってますね。

    でもこういった、明らかに事故になってるけど「誰もやってないです」と言い張った場合どうなるんでしょう。
    警察沙汰になったら捜査とかするとは思いますけど・・・。
    どこでなったとかは、そのスタッフしか介助してない場合以外は特定が難しいですよね。
    で、特定となったとしても、もしかしたら冤罪かもしれないし・・。
    どうすればいいんでしょうね。事故なく介助できればいいのかもしれないけど、そうはならないし・・・。

    やっぱりスタッフが1人で介助するって場面が多いと、事故になりやすいし、事故になっても黙っとくってなるような気がします。

    • アバター画像 介護職員A より:

      >デイちゃんさん

      こんばんは~
      コメントありがとうございます^^

      居宅系のショートステイや通所介護サービスの場合は自宅にも帰りますし、色々な事業所を利用している場合もありますから入所系の介護サービスに比べると尚更発生状況の特定が難しくなりますね。
      あとは「事件性があるかないか」ということを見極めて、事件性が無く事故である場合はスタッフの特定ができない場合でも「発生原因も状況も不明の事故」という処理になるかと思われます。
      ただ、不明な事故が「寝たきり女性ばかり」「短期間に」「連続して」発生したから事件性が疑われて明るみになったのでしょう。
      そう考えると「氷山の一角」でしょうね。