前回の記事で「現状の社会情勢の中で介護施設に行事は必要なのか不要なのか」ということについて記事を書きました(下記記事参照)。
コロナ禍や施設側のエゴや人員不足などといった状況がクリアできているのなら利用者のニーズやメリットのために行事は必要と言えますが、そうでない場合はデメリットの方が大きくなるため不要なのではないかという内容でした。
さて今回は、「介護施設にレクリエーションは必要なのか不要なのか」というテーマについてリクエストを頂きましたので記事にまとめていきたいと思います。
結論から言えば、「レクリエーションは必要」ということになりますが、「そもそも行事とレクはどう違うの?」ということも解説していきます。
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介護施設にレクリエーションは必要?不要?行事との違いは?
それでは早速、「介護施設にレクリエーションは必要なのか不要なのか」ということと「行事とレクの違い」について解説していきます。
介護施設の運営基準によりレクリエーションは必要
レクリエーションをすることで利用者に様々なメリットがあります(メリットについては後述します)。
また、そもそも論ですが「介護施設の人員、設備及び運営に関する基準」に「適宜レクリエーション行事をしなければならない」と明記されているため「レクを全くしないという選択肢はない(=レクは必要)」ということになります。
例えば、指定介護老人福祉施設(特養)の運営基準は以下のようになっています。
(社会生活上の便宜の提供等)
第十六条 指定介護老人福祉施設は、教養娯楽設備等を備えるほか、適宜入所者のためのレクリエーション行事を行わなければならない。
他の事業所形態の運営基準にもレクに言及した同じような条文があります。
ここで気になるのは、「レクリエーション行事」と明記されていることです。
何故気になるのかと言うと、「レクリエーション≒行事」と解釈することもできますし、「レクリエーション&行事」と解釈することもできるからです。
この点については、「どちらの解釈をするにしても常識の範囲内で丁度良くやりなさいよ」ということになるかと思われます。
確かに「レクは行事でもあり、行事はレクでもある」という場合もありますし、「レクと行事は全く別物」という場合もあります。
では、行事とレクの違いは何なのでしょうか。
次で解説していきます。
行事とレクリエーションの違いは?
行事とレクリエーションの共通点として、
- コミュニケーションや交流の機会が増える
- 身体機能の維持や向上
- 刺激を受けることで脳が活性化する
などのメリットがあります。
では、行事とレクの違いは何でしょうか。
行事
- 季節感や生きがいを感じてもらうことが目的
- 式典の場合がある
- 家族や地域の人や来賓など外部の人が参加する場合がある
- 日程や時間が事前に決まっており変更は困難
- 準備、当日、後片付けが大掛かり
などが行事の特徴になり、レクとの違いになります。
レクリエーション
- ストレス発散や疲労回復が目的
- 生活の中にゆとりと楽しみを作る
- ユニットやフロア内で行われることが多い
- 家族や外部の人は参加しないことが殆ど
- 特に日程や時間が決まっていない(融通が利く)
- 利用者個々で違うことをやっても良い
などがレクリエーションの特徴になり、行事との違いになります。
現状ではレクをすることが困難?どうすればいい?
介護施設ではレクリエーションが必要だとしても、現状の介護現場ではレクをすることが困難な状況もあるのではないでしょうか。
例えば、
- 人員不足でレクまで手が回らない
- 業務過多でレクをする時間がない
- 利用者の状態や性格が様々でレクの内容が決まらない
などの状況です。
人員不足でレクまで手が回らない
人手不足の介護現場ではレクまで手が回りません。
毎日必ずしなければならない三大介護(食事・排泄・入浴)をするだけで精一杯で、レクができない状況はあり得る話ではないでしょうか。
レクも「適宜」しなければなりませんが、毎日必ずしなければならないわけでもないため、やはり業務の優先順位は三大介護が上になります。
業務過多でレクをする時間がない
人員が基準通り配置されていても業務過多状態でレクをする時間が取れないことも多々あります。
何故なら、介護現場ではやることが尽きないからです。
そうなってくると、「基準自体がおかしい」ということになってきますが正にその通りではないでしょうか。
更に人員配置基準の規制緩和をしていこうとする動きもありますし、仮にそうなった場合は益々レクをする機会が減っていくことは必至です。
利用者の状態や性格が様々でレクの内容が決まらない
介護施設には様々な利用者が入所しています。
年齢も状態も性格も生活歴も既往歴も個々で違うのですから、レクの内容が一人一人に合ったものにすることは非常に困難です。
「こんなお遊戯会みたいなことしたくない」というようなことを言う利用者も居れば、レクの内容がわかっているのかわかっていないのかさえわからない寝たきりの利用者も居ます。
そういう状況であれば、レクの内容が決まらない上に他の業務に追われることでレクをすることが困難になります。
適宜レクをするにはどうすればいい?
レクをすることが困難な理由の大半は、「基準と環境にある」と言えます。
つまり、「レクをしなければならないと言うくせにレクが実施できる人員配置基準になっておらず、業務の量やレクができる時間配分を現場に丸投げしているなどの環境が整備されていないことが問題」なのです。
その点には目もくれず、「時間は作るものだ」「レクができる方法を検討しなさい」などと現場にばかり押し付けてしまうと、
- 休憩時間を削ってレクをする時間を作る(サービス残業)
- 理不尽さに嫌気が差してしまう
- 嫌気が差して退職してしまう
- 更に人員不足となり益々レクができなくなる
という悪循環に陥ってしまうことになります。
ですから、「現場ばかりに押しつけず事業所全体でレクができる方法を考えていく」ということが大切です。
次にレクの内容についてですが、レクは行事と比べると時間も内容も融通が利くので必ず全員が同じレクをしなければならないということはないですし、「こんなお遊戯会みたいなことはできねぇ」などと言っていた人が、実際にレクをやり出すと熱中して最後には「ああ面白かった」という感想に変化することも往々にしてあります。
ですから、まずは「レクに参加できる機会を提供する」ということが大切です。
最後に
今回は、リクエストにお応えして「介護施設でのレクリエーションは必要か不要か」ということについて記事を書きました。
まとめると、
- レクは利用者にとってもメリットが多い
- 介護施設の運営基準にも「適宜レクをしなければならない」と定めてある
- レクは行事とは違い事業所のエゴや見栄に影響されないため目的が健全
という理由から「レクは必要」という結論になります。
以上、介護施設でのレクの要否について書きましたがご参考になれば幸いです。