介護現場には、「仕事をしない」「仕事をサボる」「仕事を人に押し付ける」という職員が少なからず居ます。
本来であればそんな職員は「労働契約上の債務不履行」に該当するわけですから、状況に見合った扱いや処分をされたり、最悪の場合は損害賠償請求をされてもおかしくない存在です(民法第415条1項)。
(債務不履行による損害賠償)
第四百十五条 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
【引用元】民法
しかし、介護事業所の中にはこういった仕事をしない職員に対して何らの処分をすることもない上に、淡々と債務不履行分の給料まで支払い続けているというおかしな状況があったりします。
今回はリクエストを頂戴しましたので、「仕事をしない職員に介護事業所が給料を払い続ける謎」について記事を書きたいと思います。
介護事業所が仕事をしない職員に給料を払い続ける3つの理由
仕事をしない職員に給料を払い続けているなんて、謎でしかありませんよね。
本来であれば業務を行っていく上で効率も悪いですし、そもそも給料分の働きをしていないわけですから会社としては何か手を打つ必要があるはずです。
しかし、介護事業所の中には仕事をしない職員が野放し状態で一人前の給料を淡々と払い続けている所もあります。
以下でその理由をご紹介していきます。
理由①:人員不足
薄々気づいている人もいらっしゃるでしょうが、「人員不足の介護現場では仕事をしないスタッフでも居て貰わないと人員配置基準を満たすことができなくなってしまう」ということが最大の理由になります。
人員配置基準を満たしていなければ運営を継続していくことができないため、介護事業所は仕事をしない職員にも給料を払い続けて囲い込みをしていかなければならないのです。
これは人員配置基準が厳しすぎるのではなく、そもそもの「介護職員のなり手が居ない」ということもありますが、「人員不足を解消できない介護事業所の問題」が大きいと言えます。
何故なら、現状でも人員が満たされている介護事業所が少なからず存在するわけですから、人員不足の介護事業所には人員不足となる何らかの原因があると考えられるからです。
理由②:現場に押し付けておけばいいという考え
いくら人員配置基準を満たすためとは言っても、業務効率が落ちるような職員に給料を払い続けるのは避けたいと考えるのが普通でしょう。
しかし、介護サービスの質とか達成度は数値化しにくいため「とりあえず日々の業務が回ればそれでいい」という考えに行き着きます。
つまり、もっと噛み砕いて言うと「現場職員に押し付けておけば業務は回るのだからそれでいい」という考え方になります。
ここで問題となるのは、「頑張っている職員の負担が増大する」ということですが、経営者としては人員配置基準が満たされていて日々の業務が回っていればそれでいいわけです。
頑張っているからと言って給料が増えるわけではないため、業務負担を全て現場に丸投げし、仕事をしない職員にも給料を払い続けているということになります。
それでは頑張っている職員が報われませんしモチベーションも保てない環境になってしまいますが、そういう所が「人員不足が人員不足を呼び仕事をしない職員にも給料を払い続ける悪循環に陥っている」と言えるでしょう。
理由③:仕事をしていないという判断が難しい
介護の仕事は個人の実績や仕事ぶりを数値化することが難しいため、「仕事をしていない」という判断も困難になります。
同僚や上司などからの「あの人は仕事をしていない」という主観に基づいた評価しか判断材料がないため、思い切った処分に踏み切りにくいという点が挙げられます。
座っているだけで何もしていない(ように見える)職員でも、「利用者の見守りをしていました」などと言われれば、見守りなどしていなかったということを証明しなければ仕事をしていなかったという証明もできないことになります。
仕事をサボっている状態は債務不履行状態ではあるものの、債務不履行を証明することが困難であるため仕事をしない職員にも給料を払い続けているのです。
最後に
今回はリクエストにお応えして、「介護事業所が仕事をしない職員に給料を払い続ける3つの理由」についてご紹介しました。
まとめると、
- 人員不足のため
- 現場に押し付けておけばいいため
- 仕事をしていないという判断が難しいため
ということになります。
頑張っている職員ばかりに負担がいき、その上給料も変わらないということであれば、頑張っている人から先に辞めていく悪循環に陥ってしまいます。
職場環境や待遇の根本的な見直しが必要でしょう。
コメント
あくまで同僚目線としての「仕事しない職員」視点ならまだわからなくもないですが、ブラック介護施設のキラキラ経営者等の最高権力者が価格には転嫁していないであろう無益なキラキラ業務(サービス)を増やすのはいかがなものでしょうかね。
暇してるって言われたらだから何だって思いますが、ユニットケア(笑)と言ったところで下手をすると従来型で30~50人を1人で見ている時間よりも、10人を1人で見ている方が長いですからね。
一瞬3人の職員になったと思ったら、すぐに2人で10人、片方がいなければ1人で9人。
思えば私も押し付けていた側だったように思います。言い訳をすればなるべく職員を1人にしても問題が無いような時間帯を狙っていたつもりですが、当時ペアになった同僚はどう思っていたことやら。
個人的に当時のキラキラ職員(実質トップ当時)に賛同できないものは目を盗んでやってはいませんでしたが、どうしてあそこまで気持ちの悪い業務を増やせるのか。よくて無益、現場レベルでは損益しかないのにと愚痴しかありません。
もっとも、これは介護以外の会社でも経験しましたが。
>めど立てたい人さん
こんばんは~
コメントありがとうございます^^
キラキラ系に対しては、まだまだ「素晴らしい」「頑張っている」「キラキラしていることはいいことだ」という誤った認識が根強く残っていますからね。
トップがキラキラ系だともうどうしようもないですよね。
ありがとうございました。
会社は「人件費削減」と言うんだけど、だったら何も仕事しない奴の給料をカットすればいいと思うんです。
なのになぜ、仕事してる人に3人分の仕事をさせようとするんでしょう。
その答えは・・
仕事する人に3人分の仕事を強要することはできるけど、仕事しない奴の給料をカットするのは難しいから、ですね。
で、最終的に仕事する人がいなくなって、崩壊・・終了となるんですね。
>デイちゃんさん
こんばんは~
リクエストありがとうございました^^
そうですよね、仕事を押し付けることよりも給料をカットすることの方が労働法規上ハードルが高いですからね。
結局は頑張っている人だけが損をする摩訶不思議な世界になってしまうのですよね。
こんにちは。
認知症高齢者からの暴力やセクハラなど、ハラスメントを受けてる介護職は多いと思います。
でも認知症高齢者のハラスメントは、責任能力を考えると?となって、介護職が泣き寝入りしたり、うやむやになってるとこが多いと思います。
で、介護職へのハラスメントを禁止する法律とかないかな?と調べてみたら・・労働契約法第5条に、「使用者は、労働者がその生命・身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう必要な配慮をするものとする」というのがありました。
つまり、認知症高齢者からのハラスメントから、使用者は労働者を守らなければならないということだと思います。
労働契約法は平成20年から施行されていますが、知らない人は多いんじゃないでしょうか。
もしよかったら、ブログで取り上げてもらえますでしょうか。
>デイちゃんさん
こんばんは~
コメントありがとうございます^^
確かに労働契約法5条には事業者の安全配慮義務が定められていますね。
ただ、労働契約法は個別の労働関係の紛争解決のための法律(つまり、民法のような私法になる)ですから、罰則もなく労基署はノータッチですし行政指導の対象にもなりません。
ですから、労働契約法に違反した場合は私法上(民法など)の損害賠償請求の対象にはなってきますが、それらを勝ち取るためには最終的に裁判で勝訴しなければならないということになろうかと思います。
全国の介護現場で発生しているであろう利用者からのハラスメントに対して安全配慮義務違反であるという訴訟が頻発すれば介護現場の劣悪な環境が日の目を見ることになるでしょうが、なかなかのハードルの高さも感じますね><
はい、実際は罰則ないですからね。
安全配慮義務違反は、労働契約を果たさなかったことになるため、民法における債務不履行となって、民法に則って損害賠償を請求されることがあるでしょうけど。
ただ、法律で決まってるとか言われたら、今までハラスメントを容認してた管理者も、スルーしにくくなるかもしれませんね。
>デイちゃんさん
返信ありがとうございます^^
そうですね。
次回の介護報酬改定でも利用者からのハラスメントを防ぐ対策を事業所に求めていくような内容も含まれているようですから、スルーはしにくくなるでしょうね。
また記事にまとめてみたいと思います。