よく言われたり小耳に挟んだりするのですが、「ショートは特養より仕事が楽ですよね」と言っていたり思っている職員が結構多いようです。
どちらが楽か楽じゃないかは、業務の内容や質が違ってくるので一概には言い切れないのですが「ショートステイの方が楽」と言いきれてしまう人は、「業務をケア(介助)だけに限定した見方しかできない短絡的な思考の人」ではないでしょうか。
ショートステイも特養も、どちらも数年ずつ働いていた経験がある私が、その質問の答えを書いていきたいと思います。
そもそも介護サービスの種別が違う
そもそも、特養とショートステイは介護サービスの種別が違います。
種別とは「施設入所系介護サービス」か「居宅系介護サービス」かの違いのことです。
特養は「施設入所系介護サービス」になり、ショートステイは「居宅系介護サービス」になります。
まずはこの違いを理解しておく必要がありますが、よくわかっていない介護職員も多いのではないでしょうか。
毎日ただ単純に「目先の介護業務をこなしているだけ」の介護職員では情報弱者となってしまいます。
自分の働いている業界の制度や情勢にもっとアンテナを張っておくことが大切です。
ショートステイも介護施設という建物で泊まりの介護サービスを提供するので「施設入所系介護サービス」だと誤解をしやすいのですが、厳密には「短期入所生活介護」という名称の「居宅系の施設介護サービス」になります。
特養は「施設入所系介護サービス」を「施設で提供する」のでわかりやすいかと思います。
特養とショートステイの具体的な違い
特養とショートステイの違いを具体的に書き出して確認していきたいと思います。
【特養】
サービス種別 | 施設系介護サービス |
担当ケアマネ | 施設ケアマネ |
入所条件 | 要介護3以上(特例あり) |
利用方法 | 長期的な利用(終の棲家) |
その他の特徴 | ・看取り介護あり
・入所者の住所は施設の住所となる場合が多い |
【主な業務内容】
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【ショートステイ】
サービス種別 | 居宅系介護サービス |
担当ケアマネ | 居宅ケアマネ |
入所条件 | 要支援1~2、要介護1~5 |
利用方法 | 短期的な利用、宿泊 |
その他の特徴 | ・看取り介護なし
・入所者の住所は自宅の住所のまま |
【主な業務内容】
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介護度が高いほど業務負担や量が多いわけではない
こうして書き出してみると、特養は「重度の要介護者を介護する必要があるが、その他の業務量は多くない」、ショートステイは「重度の要介護度の利用者は特養よりも多くはないが、その他の業務量が多い」ということがわかります。
しかし、介護度が高いからと言って介護が大変で、軽いから楽というわけではありません。
要介護5の寝たきりの利用者は生活の全てに介助が必要ですが、要介護1~2の「一部介助」「半介助」の利用者の方が介護が大変な場合があります。
三大介護と言われている「食事」「排泄」「入浴」にしてみても、一部介助の利用者は「自分でできる所や自分で行いたい所は自分でやってもらって、介護職員はできない部分を介助する必要がある」ので、それまで待っておく必要があります。
つまり、一部介助の方が時間が掛かるのです。
また、認知症があるのに体は元気な利用者の場合、
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の対応が必要になってくる可能性が高くなります。
これらの行動をする利用者の介護は、寝たきりの利用者の介護よりも大変になってきます。
結論
最後に、結論を申し上げようと思います。
当たり障りのない結論になってしまい申し訳ないのですが、結論として「特養もショートステイもどっちも大変」だと思います。
では何故、「ショートの方が仕事が楽」と言い切ってしまう職員が出てくるのでしょうか。
恐らくそういう人は「利用者の介護度や自立度」だけを見て「肉体的疲労」のことしか思いを馳せられないのだと思います。
そういう意味で、冒頭で申し上げました通り、「業務をケアだけに限定した見方しかできない短絡的な思考の人」と言えます。
確かにショートは介護度が軽い人も利用できますし、利用人数が少ない日もあります。
退所者が多い日は日中は荷物チェックやボディチェックや送り出しなどでてんやわんやになりますが、泊まりの利用者の人数が減るので夜勤者にとっては「少しはマシな環境」であると言えます。
そういったことを総合的に判断すると、「結局、どっちも大変」と言えます。