介護の教科書や参考書などで「全てのトラブルは不適切なケアが原因」という文言をよく見掛けます。
この文章をそのまま受け取ると
「つまりはどう足掻こうが現場で起こったトラブルは全て介護職員の責任」
ということになります。
もしそうならば「ちゃんちゃら可笑しい」理論になります。
今回は「介護現場での全てのトラブルを介護職員の責任にしようとする風潮」について物申したいと思います。
不適切なケアとは
確かに介護現場では不適切と言われるようなケア方法やケアとは言えないような対応をしている介護職員も存在します。
そういう態度の対応をしていれば、利用者ともトラブルになるでしょう。
これは誰もが理解できることです。
しかし、普通に対応をしていても、相手が認知症者だったり、権利者意識の強い利用者だったりすれば、トラブルに発展することは往々にしてあり得ます。
ここで言う「不適切なケア」とは、明らかに介護職員に落ち度があるような事例を指すのか、普通にケア業務を行っていてもトラブルが発生してしまったことを指しているのか、若しくはその両方かが定かではありませんが、「全てのトラブル」と書いてある以上、その両方が該当するものと推察します。
「普通のケア」でもトラブル?
相手が認知症者や権利者意識の強い高齢者であれば、普通に接していてもトラブルに発展するリスクは十分にあり得ます。
もちろん、綺麗ごとを言えば「その利用者の状態や性格に合わせたケアを行っていればトラブルは防げた」という判断ができるかもしれません。
しかし、それはあくまでも結果論です。
どんなに細心の注意を払っていても「トラブルが発生する時は発生する」のです。
ですから、「普通のケア」の重箱の隅をつつくようにあげつらって「不適切なケアだった」と評するのは少々傲慢な考え方だと言えます。
いつも「特別」を求める介護業界
利用者や家族の権利者意識もそうですが、教科書や専門書に至っても、介護職員に求められているのは「専門性であり特別なケア」になります。
しかしよく考えて欲しいのですが、介護職員に対する待遇や処遇は「特別」どころか「普通以下」のものになります。
最低の待遇で最高のサービスを求める方に無理があるのです。
大体が現場を知らない人
「全てのトラブルは不適切なケアが原因」
そんなことを言っていたり書いている人の経歴を調べてみて下さい。
大体の人が現場を知りません。
もちろん、制度や関係法令やガイドラインなどの知識は豊富かもしれませんが、実際の現場に殆ど入ったことがなく、見聞きしただけの情報で机上の空論を述べているに過ぎません。
そりゃ、制度や情報についても我々よりも詳しいでしょう。
我々が現場に入っている間にいくらでも情報を集めることができるのです。
常に動いている現場に入っている我々にとっては、豊富な情報を持っている人は「先生」や「講師」と崇めたりする存在になるのかもしれません。
しかし、介護現場で本当に活きた情報を持っているのは我々介護職員なのです。
そんな「先生」方には、お金を払ってもらってでも我々の現状を知って欲しいと思うのですが、現状では、「現場職員が現場を知らない先生方にお金を払っている」のが相当闇深いと感じます。
最後に
今回は「介護現場でのトラブルの全てを介護職員の責任にしようとする風潮」について物申しました。
「全てのトラブルの原因が不適切なケア」のはずはありません。
その理論でいくと「トラブルが起これば、ケアが全て不適切だった」ということになりかねません。
介護職員を追い詰める理論ばかりに踊らされたり、自己犠牲を払わされる前に、「おかしいことはおかしいと言える勇気」を持つことが大切です。
大体が、現場経験の乏しい人物の発言です。
気にする必要もなければ、お金を払う必要は全くありません。
本当におかしいのは、現場を知らないのに高尚なことを言う人物であり、最低の待遇で最高のサービスを求める制度そのものなのです。