介護現場で働いていると必ずミスや介護事故が発生します。
インシデントやアクシデントと呼ばれるものです。
例えば、
- 転倒や転落
- 誤嚥や誤飲
- 誤薬や落薬
- 異食(食べ物ではないものを食べてしまうこと)
- 配膳間違い
- その他の介護(対応)ミス
などになります。
それらのミスや介護事故は、どれだけ気をつけていても必ず発生してしまいます。
必ず発生してしまう前提で、スタッフ全員で情報共有をして可能な限り未然に防げるようにしたり発生件数を減らしていく対策を行い管理していくのが「リスクマネジメント」になります。
それはそうだとしても、ミスや介護事故が「自分のせいで発生」した場合は誰でも落ち込んでしまいます。
そういう気持ちや感情になってしまうのは当然のことで、逆にミスや事故を発生させても「全然平気」「全く気にしない」という介護職員の方が危険です。
何故なら、ミスや介護事故を繰り返し発生させないようにするためには、「今回発生したことを気に留めながら働いていく必要があるから」です。
しかし、そうは言っても発生直後はひどく落ち込んでしまったり、気にしすぎてなかなか立ち直れないという場合も往々にしてあります。
そんな気分のままでは良い仕事もできませんし、落ち込んだ状態で働いているとまた別のミスをしてしまうなどの悪循環に陥ってしまう可能性もあり得ます。
ですから、できるだけ早く立ち直った方が良いのは間違いありませんが、そう簡単にいかないのも事実です。
今回は、自分のせいでミスや介護事故が発生して落ち込んでしまった時の復活方法についてご紹介したいと思います。
自分のせいでミスや介護事故が発生すると誰でも落ち込む
自分のせいでミスや介護事故が発生すると誰でも落ち込みます。
誰もわざとミスをしようとしている人などいません。
事業所の雰囲気や風潮によっては、ミスや事故を発生させてしまった介護職員が落ち込みから立ち直りにくい環境があったりします。
例えば、以下になります。
介護事故は全て介護職員の責任という風潮
介護事故の発生原因が利用者自身の行動によって発生した場合は介護職員の責任ではありません。
例えば、
- 付き添っていない状態での転倒や転落
- 目を離した隙の異食
などになります。
しかし、一切合切、介護現場で発生した介護事故は介護職員の責任になってしまう事業所もあるのではないでしょうか。
つまり、
「介護職員が付き添っていないから介護職員の責任」
「介護職員が目を離したから介護職員の責任」
→「だから反省をしなさい」
という風潮があれば、介護職員の責任で発生してしまったミスや介護事故は尚更厳しく言われたり強く反省を促されたりすることでしょう。
朝礼などで名指しで吊るし上げられるような事業所もあるようです。
そもそも、100%防げたであろう場合とそうではない場合とを同列で考えて個人攻撃をしてしまっている事業所の存在自体が事故です。
そんな環境では介護職員は萎縮してしまい、なかなか立ち直ることができませんし、戦々恐々とした雰囲気が更なるミスや介護事故を呼び寄せることになってしまいます。
ミスや介護事故を続発させないためにも、介護事業所のリスクマネジメントの捉え方や対応の仕方で全然違ってくるのです。
リスクマネジメントのために何度も思い出さなければならない
自分のせいで発生してしまったミスや介護事故で落ち込んでしまった場合は、早く気持ちを切り替えたいものです。
しかし、介護現場ではインシデントやアクシデントが発生した場合は、
- リスク報告書を作成する
- リスクマネジメント委員会で協議や検討する
- 職員会議などで情報共有したり検討する
などのリスクマネジメントが行われます。
1つのミスや介護事故に対して、リスク報告書を作成してリスクマネジメント委員会や職員会議などで情報を共有し何度も何度も触れられます。
仕方がないことだとしても、場合によっては1か月以上にも亘り何度も何度もミスや介護事故について触れられるため、その度に「申し訳ない気持ちを思い出してしまう」ことになり、なかなか気持ちを切り替えることができません。
気持ちを切り替えることができなければ、落ち込んだ状態からなかなか復活できないのです。
自分のせいでミスや介護事故…落ち込みから立ち直る復活方法
自分のせいでミスや介護事故が発生して落ち込んでしまった場合、そこから復活するには「気持ちを切り替える」という方法が一番有効です。
しかし、前述したように介護事業所の悪しき風潮やリスクマネジメントの関係で、なかなか気持ちを切り替えることができない環境があるのも事実です。
では、どうすればいいのでしょうか。
以下でご紹介していきます。
復活方法①:労働契約であることを再認識する
介護事業所はひとつの村社会ですから、その村の中でのしきたりや行われることが自分の人生の大部分のように感じてしまいがちです。
しかし、「労働力を提供してその対価として給料を貰っている労働契約」であることを忘れなければ、それほどひどく落ち込むこともないでしょう。
「会社が人生の全てではない」ということを再認識するのです。
最悪の場合は「いつでも辞めることができる」のです。
もちろん、ミスをするたびに退職や転職をするわけにもいきませんし、いつでも辞められるのだから責任感を感じる必要はないと言っているわけではありません。
ここで言いたいのは、
- 自分を必要以上に追い詰めない
- 逃げ道があることを再認識することで心に余裕を持つ
- 狭い世界を人生の全てだと思い込むのをやめて気を楽にする
ということです。
心に余裕が持てれば、今までとは違う見え方ができる可能性もありますし、落ち込みからの復活もできるのではないでしょうか。
復活方法②:失敗から教訓を得て常識を見失わない
自分のしてしまったミスや介護事故は申し訳ない気持ちになり落ち込んでしまいがちですが、冷静に客観的に事実だけを受け止めて次は同じミスをしないように自分の教訓とすることが大切です。
それでも、介護事業所の悪しき風潮などで苦しめられることもあるかもしれませんが、その場合も常識を見失わずに非常識な事業所に振り回されないようにしましょう。
「非常識な事業所に付き合うのは本当に疲れるなぁ」くらいに考えておけばいいでしょう。
何故なら、リスクマネジメントで個人攻撃をするような事業所は明らかにマトモではないからです。
最悪の場合は、働き続けることをこちらから願い下げすれば良いのですから、まずは自分をしっかり持って失敗から学び常識を見失わないように立ち振る舞うことが重要です。
復活方法③:先人(先輩)に学ぶ
介護現場で働いていれば、誰でも一度くらいはミスや失敗をしてしまったり、自分のせいで介護事故が発生して落ち込んだ経験があるのではないでしょうか。
その落ち込んだ状態からの復活方法は、同じ介護事業所の先輩や上司に学ぶのも1つの方法です。
信頼できる先輩や上司であれば直接相談して聞いてみてもいいでしょうし、過去に先人たちがミスなどをした際の立ち振る舞いを観察してみるのも良いでしょう。
事業所独特の上手く立ち直れるポイントがあるかもしれません。
また、いつもミスや失敗ばかりしているような職員がいた場合、そういう職員からでも学べることがあることもあります(ミスや事故を全く気にしないという人は論外として)。
詳しくは、下記記事をチェックしてみて下さい。
最後に
今回は、自分のせいでミスや介護事故が発生して落ち込んでしまった時に立ち直る方法をご紹介しました。
もちろん、オーソドックスな方法として、プライベートで趣味に没頭したりお風呂にゆっくり浸かってリラックスするなどがありますが、それ以外で落ち込んだ時に介護現場で役立ちそうな方法をご紹介しました。
自分のせいでミスや介護事故が発生すれば誰でも落ち込みますが、介護事業所の風潮や雰囲気に左右される部分も大きいのです。
現場の介護職員だけでなく、事業所全体の問題として考えていくことが重要です。
コメント
入浴介助で機械浴のストレッチャーから、全介助の利用者さんを転倒させてしまい、怪我させてしまいました。二人で介助していましたが、雰囲気的にまだ介護経験の浅い私の責任のような雰囲気になっていて、翌日は出社し、平然と仕事出来たのですが、今日お休みで、気持ちをリフレッシュさせたいと1日過ごしてみましたが、どんどん動悸がとまらなく、明日、出社できるか仕事できるか不安でたまりません。
助けて下さい。
>オオツカエイコさん
はじめまして、こんにちは~
コメントありがとうございます^^
自分が介助をしていて利用者を怪我させてしまうと居た堪れない気持ちになりますよね。
お気持ちお察し致します。
私も事故が発生してひどく落ち込んだり不安になったり利用者やその家族に申し訳なく思ったり目の前が真っ暗になった経験があります。
でもそんな気持ちのままではいい仕事もできませんし、また新たなミスを発生させてしまう原因にもなります。
かと言って、事故直後は気持ちが不安定になるのは普通のことで、全然平気な人の方がどうかしているのです。
道は大きく分けて2つです。
1つ目は、試練だと思って耐えることです。
耐えることはつらいことですが、この苦い経験も自分の知見を広げ認識を深め技術を向上させるひとつの糧になります。
日にち薬で、時間が経てば不安な気持ちや周りの押しつぶすような環境も和らぐでしょうから、とにかく耐えて働き続けることで今以上に悪くはならないでしょう。
2つ目は、逃げることです。
何もかも投げ出して無責任に逃げ出すことは良くありませんが、あまりにもつらく心が折れてしまいそうなほど追いつめられるなら最終的に退職をするという道が残っています。
逃げ道があるだけでも多少は気が楽になるでしょう。
そもそも、事故は犯人探しをしたり誰かに責任を押し付けるものではないのですから、まずは冷静に何故そうなったのか、本当に自分だけが悪いのか、今後どうすればこのようなことが起きないのか、というリスクマネジメントをしていくことが大切です。
おつらいでしょうが、陰ながら応援しています。
記事中にも触れられていましたが、ブラック介護施設は従業員同士の殺し合いの他に権力者が自身が叱責の理由として使っていますからね。
勤めたブラック介護施設では、私に直接の被害はなかったもののヒヤリハットが多いだけで上司がキラキラ職員(実質トップ当時)に叱責されていたと聞きました。
少ないに越したことはなくともなくせるものではないという認識がないのですよね。
しかも、ヒヤリハットって名ばかりの実質自己の報告でした。
他の方への返答にあれですが。
良い循環なのかもしれませんが、次は何も書かない職員がいようともそれにレッテルを貼らない環境づくりをして行った方がいいような気がしましたがどうでしょうか?
>めど立てたい人さん
こんばんは~
コメントありがとうございます^^
そうですね、事故は少ないに越したことはないですが、絶対にゼロにはならないという認識を持つことが必要ですね。
レッテル貼りについては、語弊があったかもしれませんが、周りはそういうつもりもなく事実もない場合でも目に見えない無言の圧が掛かってきて、本人がレッテルを貼られてしまうように感じてしまうという意味でした。
ですから、レッテルを貼る環境があるわけではないのですが、そういうが発生してしまうことはありますね。
これは、例えば「頑張っている職員を褒めたり評価をする」という良い環境がある場合でも、その反面「褒められなかったり評価されなかった職員に無言の圧が掛かっている(と本人が感じる)」ということは往々にしてあり得るのではないでしょうか。
頑張っても頑張らなくても同じ待遇や給料では、頑張ろうと思う気持ちが無くなったりモチベーションが保てなくなるという環境を改善していこうとすれば、そういう状況も自然な流れのように思っています。
事故予防の一環として思い付いたのがヒヤリハットの活用でした。
「これは事故につながる」と感じた事は、報告書に一行メモでも構わないので書き留めて提出。フロアミーティングでリスクについて再確認する・・・・と言う具合で、スタッフそれぞれが意識を高めてもらえれば・・・・との考えで全体ミーティングの際に提案、その時は了解を得たのですが・・・・案の定と言いますか、おばへるさんたちを中心に猛反発が起こりました。
「ヒヤリハットを何回も出していたら自分たちのフロアではいつも事故の危険がある様に思われる」
との事でした。ヒヤリハットって本来、リスク予防の為に、また、「気付き」を生むためにも必要だと思ったんですが、現場の方々の意識はどうも違う様でした。
また、本文にもありましたように事故発生の際に当事者(又は第一発見者)を吊し上げて全責任を負わせるようなことはあってはならないと意見を述べました所、この時にはフロアリーダーが猛反発。「なにを偉そうに」的な感じで言い募っておりました。
事故が発生すれば大切なのは検証であって、それに基づいた気付きと意識の変化だと思うのですが現場の人たちにとっては個人攻撃の対象が失われる事の方が怖いのだとしか思えない事例でした。
仕事探しで難儀しておりますが、もう介護の現場には戻りたくないですね。
>失業中のswさん
こんばんは~
コメントありがとうございます^^
ハインリッヒの法則によれば、1つの重大事故の背後には29の軽微な事故があり、更にその背後には300もの異常があると言われているのですから、ヒヤリハットが多いほど重大事故を未然に防ぐなどの管理には役立つと私も思います。
ヒヤリハットが1件もないのに急に重大事故が発生する方が不自然ですものね。
私もヒヤリハットではなく「気づき」として一行メモの提出を実際に現場でやっております。
例えば、「(利用者の)〇〇さんがリビングで急に靴下を脱ぎ始めた」などです。
恐らく失業中のswさんと同じような試みだと思われますが、ヒヤリハットではなく「気づき」としたことで職員の反発は起こらず皆がせっせと書き溜めてくれています。
むしろ、1件も気づきを書かない職員は「気づきが全くない(又は少ない)職員」というような見られ方をされたりレッテル貼りをされるので、それを避けるように必死で気づこうとする良い循環が生まれているのではないかと思っています。
個人攻撃の対象がいないと困ってしまう介護現場は明らかに異常ですが、往々にしてあり得るので「言い得て妙」ですね。
社会情勢がなかなか厳しい昨今ですが、仕事探し頑張って下さい^^