介護現場で働いていると「トラップ(罠)が仕掛けられているのではないか?」と思うような出来事があります。
厳密には、トラップのように見えるもののトラップではありません。
では何なのかと言うと、「誰かのミスが自分のミスを誘発し、最終的に直接介助をした介護職員の責任になってしまう」という状況です。
つまり、誰かのミスを自分が気づいて対応しないと自分がミスをしてしまうことになるのです。
ミスをしている職員も、他の誰かや介護職員を陥れようとしてわざとやっているわけではないのでしょうが、利用者に直接介助を行う介護職員が誰かのミスに気づかないことでいつの間にか自分のミスにすげ替わってしまったり、大部分の責任を負うことになるため、状況だけ見れば「トラップ」と言っても過言ではありません。
今回は、介護現場で実際にあったミスがミスを誘発するトラップ(に見える出来事)3選をご紹介したいと思います。
介護現場でミスがミスを誘発するトラップ(に見える出来事)3選
冒頭でも申し上げた通り、実際にはトラップではなくミスです(そう信じたいものです)。
しかし、
- トラップのような状況
- 試されているかのような状況
- 気づかなければ自分が窮地に陥る状況
という三拍子が揃っているため、記事中では「トラップ」と呼ぶこととします。
それでは早速、介護現場で実際にあったミスがミスを呼ぶトラップ3選をご紹介していきます。
①薬が変更になっているはずなのに変更になっていない
申し送りなどで利用者の薬の種類や量が変更になったと聞いたはずなのに、いつもと何ら変わらない内容の薬が薬箱に入っていることがありました。
この時に、「薬の内容が変更になっているはずなのに今までのものと変わっていない」ということに気づくか気づかないかが問題となります。
全利用者の全ての薬の内容や量などを完全に把握するのはなかなか難しいことですが(実際私も完璧には把握できていません)、「あれ、何かいつもと違う(又は、いつもと全く同じだ)」という違和感や直感を頼りにすることになります。
違和感を感じた場合でも、
「まぁ、自分が知らないだけでちゃんと変更された薬が入っているだろう」
「看護師が薬をセットしているのだから間違いは無いだろう」
と思ってそのまま間違った内容の薬を服薬介助してしまうと、自分(介護職員)もミスを犯してしまうことになります。
もちろん、このケースでは「看護師の薬(種類や量)のセットミス」が発端ですが、最終的に間違った内容の薬を服薬介助してしまったという「介護職員のミス」にもなってしまいます。
介護職員はセットされている薬を信じて介助をしただけなので、ミスと言われる筋合いも責任も無いように思われますが、事前に薬が変更になっていることを申し送ったのに、
- 間違いに気づかなかった
- 薬袋の内容を確認をしなかった
- 看護師に再確認しなかった
という角度から「介護職員にも落ち度があった」ということになり、そして「最終的に手を下した」ということでリスク報告書を書くことになったりします。
もうこの状況は「トラップ」と言っても過言ではありません。
②食事形態が変更になっているはずなのに変更になっていない
これも前述した薬のトラップによく似ているケースなのですが、申し送りなどで利用者の食事形態が変更になっていると聞いたはずなのに厨房から届けられた食事が今まで通りの食事形態で届けられることがありました。
この場合も、「食事形態が変更になっているはずなのに変更になっていないものが届けられた」という間違っている状況に気づけるか気づけないかが問題になります。
業務に追われながらいつもの流れで盛り付けをして配膳してしまうと、「介護職員の配膳ミス」ということになってしまいます。
もちろん、このケースでは「厨房が間違った食事形態のものを届けたミス」が発端ですが、最終的に間違いに気づかず間違った食事形態で配膳してしまった「介護職員のミス」となり、介護職員がリスク報告書を書くことになります。
「気づかなかった自分も悪いけど…」「厨房から届けられた食事を信用してしまった自分がバカだった…」というやり場のない様々な感情が入り混じるこの状況は「トラップ」と言っても過言ではありません。
トラップとは少し違いますが、利用者のおやつがゼリーに変更になっていることを確認せずにドーナツを提供してしまい、利用者がドーナツを喉に詰めてお亡くなりになられたことで、配膳したスタッフが長野地裁から有罪判決を言い渡された事件があったのも記憶に新しいところです。
③服薬チェックがしてあるのに薬箱に薬が残っている
再び薬に関するトラップですが、多くの介護事業所では利用者に服薬介助をした後に「服薬済のチェック」をしているのではないでしょうか。
このチェックが入っているのに、薬箱にその利用者の薬が残っている場合があります。
この状況の場合、「誰か他のスタッフがチェックをする段(行)を間違えたのかな」と安易に考えて、薬箱に残っている薬を利用者に介助してしまうのは危険です。
もちろん、勘違いや年配スタッフの老眼などで単なるチェック間違いの場合もありますが、
- 他のスタッフが違う利用者の薬を介助してしまっていた
- 看護師が間違えて2回分の薬をセットしていた
という恐ろしい状況もあり得ます。
もし、服薬チェック間違いの原因を確認しないまま、自分が利用者に服薬介助をしてしまうと、薬が重複してしまうこととなり「ミスの上にミスを上塗りした介護職員の新たなミス」になってしまいます。
実際は、ただのチェック間違いだったのですが、もしも服薬ミスをしていた場合は、最終的に重複して服薬介助をしてしまった自分も事故や事件に巻き込まれてしまう状況は「トラップ」と言っても過言ではありません。
東京都の特養で違う利用者の薬を服薬介助してしまい利用者がお亡くなりになったという事故報道もありました。
薬は本当に怖いので、トラップに引っ掛からないように十分気をつけたいところです。
トラップに引っ掛からないようにするための対処法
介護現場で実際にあったトラップをご紹介してきましたが、では、トラップに引っ掛からないようにするためにはどうすればいいのでしょうか。
その対処法を以下でご紹介していきます。
対処法①:思い込みで介助せずに目の前の事を疑って掛かる
常に気を張って利用者の全ての既往歴や薬や変更点などを把握して完璧主義で働くことが可能なら一番良いのかもしれませんが、実際問題、なかなか難しいですし、そもそも一瞬たりとも気が抜けない毎日では身が持ちません。
肉体疲労や神経衰弱はヒューマンエラーが発生する原因にもなってしまいます。
ですから、常に気を張らなくてもポイントポイントで「思い込みで介助しないようにする」「目の前の物や出来事を疑って掛かる」という対処法が良いのではないでしょうか。
世知辛いですが、「介護現場では信じる者は救われない」と思っておくくらいが丁度いいのです。
もちろんそれは、自分がミスをしないためでありトラップに引っ掛からないようにするためです。
自分を守ることで、ひいては利用者を守ることにも繋がるのではないでしょうか。
目の前の業務を疑って掛かるリスク管理については、下記記事で詳しく書いていますのでチェックしてみて下さい。
対処法②:職員間でコミュニケーションを取る
介護現場はチームプレイですから、職員間でコミュニケーションを取っていくことが大切です。
もちろん、より良い人間関係や信頼関係を築いておくことも大切ですが、
- 違和感や疑問を放置せずに他スタッフに聞く
- お互い声を掛け合ってミスを防げるようにする
- とにかく確認、再確認、再々確認をする
というコミュニケーションが重要です。
相手に多少「こいつ、しつこいな…」などと思われても、最終的に自分がトラップに引っ掛かりミスをすることを回避し、ひいては利用者の生命を危険に晒さないためにも違和感の解消や声掛けや確認はしていくことが必要だと思っています。
あまりにしつこいと人間関係を壊してしまいかねないように思われますが、慎重に確認を重ねることで、
- 相手が気づいていない相手のミスを未然に回避できた
- 利用者に直接的な被害が及ぶ前にミスに気づけた
ということが何度もあると、逆に信頼を得ることができたり人間関係が良くなっていくキッカケになるのです。
ですから、出来るだけ多くの気づきを大切にして、職員間でのコミュニケーションを怠らないことがトラップに引っ掛からない対処法となるのではないでしょうか。
最後に
今回は、介護現場で実際にあったミスがミスを誘発するトラップ3選とトラップに引っ掛からないようにする対処法についてご紹介しました。
ミスを誘発させるような他スタッフのミスがトラップのような状況になってしまい、最終的に介助を行った介護職員がミスの上塗りをすることで窮地に陥ってしまうことになります。
思い込みで介護をせずに目の前の事を疑うくらい慎重に業務を行い、適宜、声掛けや確認をするなど、職員間でのコミュニケーションを取っていくことが大切です。
少々窮屈な対処法に感じられるかもしれませんが、介護現場では「ドンマイ!」では済まされないことも多々あるのです。
ちなみに「介護職員が服薬介助をしても法律違反にならないの?」と疑問に思われている人は、以下の記事にまとめていますのでチェックしてみて下さいね。
コメント
結局は普通にまじめに働いてる人が損をするんですよね。
例1
利用者が帰る時に便臭がしてたにもかかわらず、認知症じいさんスタッフはそのまま家に送った。次の日お迎えに行った別のスタッフが「昨日便失禁してましたけど!?」と家族にキレられる。これは認知症じいさんスタッフがバカすぎる。
例2
パーキンソン病の歩行不安定な利用者が、転倒のリスクが高くなってるので、「送迎はハイエースで行って必ず二人介助すること」と決まったのに、次の日の送迎はなぜか運転手が1人で迎えに行くことになっている。案の定、転倒骨折事故発生。
これは、当時いた管理者が仕事さぼりすぎでただの常勤相談員に降格されたんだけど、その腹いせに送迎をぐちゃぐちゃに組み替えて、他のスタッフの足をひっぱろうとしてたから。事故の責任追及時に、その相談員の責任が大きいと認められ、相談員は結局首になりました。
例3
お迎えに行くと家族が利用者に薬を飲ませており、その後デイに着いた後に看護師がまた同じ薬を飲ませていた。お迎えに行った介護スタッフが、「家で飲みましたよ?」と言うも、なぜかそのスタッフの過失になった。
「朝の服薬はデイでする」とはっきりとした取り決めをしてたのかどうか、実際は相談員&看護師の責任だと思うのですが。なぜ介護スタッフの責任に?もしその後急変があったら、どうなってたんでしょうね・・。
そう考えると、何も仕事しないスタッフは責任を押し付けられる可能性は低くなりますね。しかも「自分がしたんじゃない」「覚えてない」と言えば、だいたいはスルーできそう。
でも、サボりまくりの日本語不自由な相談員は、「したのは自分ではない」「覚えてない」と毎回言って責任逃れしようとするんだけど、「その時お前しかいなかっただろ?」と毎回きっちりと責任追及されてますから、逃げるのも限界はあるかもしれませんね。
>デイちゃんさん
こんばんは~
コメントありがとうございます^^
どの例もトラップとしてあり得そうなデイバージョンですね><
まじめに働いている人が報われる環境であって欲しいですね。