介護業界の異常性

介護施設の人員配置基準を緩和しないと人材確保が困難?規制緩和で益々人材不足になる懸念

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現在、来年(2021年)の介護報酬改定に向けて介護施設の人員配置基準を緩和させて、現状の3人対1人の配置から4人対1人にしていこうという議論が行われているということについて前回の記事でご紹介しました(下記記事をご参照ください)。

介護施設の人員配置基準見直しの検討内容はまさかの規制緩和!?埋められぬ現場との溝と温度差

現場職員としては、「これ以上、人員配置基準を緩和されたら困る」「規制緩和をするのではなく逆に厳格にしていく必要がある」というスタンスなのですが、それに対して「人もお金も有限なのに人員配置基準を現状維持又は今よりも厳格にするとして、その分の介護職員をどうやって確保するというのだ?」というご意見もありました。

結論から言えば、「人もお金も有限なのに今まで人を大切にしてこなかったから人材確保が困難になっている現状があるのに、その尻ぬぐいさえ介護職員に押し付けようとしているようでは益々人手不足になる」ということになります。

人材確保の回答になっていないかもしれませんが、つまり、「人員配置基準の規制緩和は更なる介護職の離職を誘う悪手である」ということです。

しかし確かに、人員配置基準を厳格化した場合にはその基準が満たせずに運営不能になってしまう介護施設が増えてしまう懸念もあります。

そういった状況になることも含め、以下で詳しく解説していきたいと思います。

 

 

 

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介護施設の人員配置基準の規制緩和で益々人員不足が加速する懸念

 

 

人員配置基準を3人対1人から4人対1人にすることで、基準(数字)上は基準が満たされていることになりますが、要はマンパワーを薄めただけで介護職員の絶対数が増えるわけではありません。

そこまでは理解ができるのですが、薄まったはずのマンパワーに対して更に「2倍のマンパワーを創出するイノベーションを!」などという煽り文句が入ると現場の動揺と不安を誘い反感を買うもとになるのは当然のことです。

まるで「北風と太陽」の寓話を地でいっている状態です。

冷たい北風を吹きつけられた介護職員たちは心を開くどころか益々ふさぎこんでしまうことでしょう。

ですから、人員配置基準の規制緩和をすることで益々人員不足が悪化していく要因になることには留意が必要です。

 

最先端のやりがい搾取

人材の確保は新たな入職者を募るだけでなく、今働いている介護職員の離職率を下げることにも目を向けなければなりません。

バケツにいくら水を入れてもバケツに穴が空いていたらいつまで経っても水は溜まらないのです。

人員配置基準の緩和は、その穴を更に拡げることになります。

  • 業務負担の増加
  • ストレスの増加
  • やりがいに対する対価への不満(やりがい搾取)

などの懸念があります。

何故なら、既にセンサーなどを駆使している状態の今でも相当疲弊しているのに、それほど変わらない水準のテクノロジーで人員を更に減らされれば逃げ出したくなってしまう介護職員は少なくないでしょう。

そうなれば、人材確保どころか今よりも介護職員の絶対数が減ってしまうこととなり、益々悪循環に陥ってしまいます。

最先端のテクノロジーに頼る前に、最先端のやりがい搾取で潰されてしまうのです。

 

モチベーションマネジメントの欠如

人材を確保したり離職率を下げ仕事に「やりがいを意識させる」ためには事業所や国レベルでのモチベーションマネジメントが欠かせません。

今回の、人員配置基準の規制緩和でモチベーションが上がる介護職員がどれだけいるのでしょうか。

「益々介護職員の配置が減って、おらワクワクすっぞ~」

「2倍のイノベーションどころじゃねぇ、おらの界〇拳20倍を見せてやる!」

という人はまず居ないでしょう。

もう漫画の世界です。

漫画の世界は現実ではあり得ないという意味で警鐘を鳴らされるのは当然のことですし、人材を確保するのに必須のモチベーションマネジメントが欠如しているとしか言えません。

やりがいを意識させモチベーションを上げていくためには、ハーズバーグの二要因理論で言えば「動機付け要因」が必要です。

ハーズバーグの二要因理論について、詳しくは下記記事をご参照下さい。

介護職のやりがいは事業所からの見返りがあって初めて成立するもの「ハーズバーグの二要因理論」

 

 

 

人員配置基準が現状維持又は厳格化した場合の人材確保はどうするのか

 

 

人員配置基準の規制緩和が人材確保とは全く別であり、ひいては更なる人材不足を招く悪手であることはご理解頂けたかと思います。

では、人員配置基準が現状維持又は更なる厳格化になった場合、人材の確保はどうすればいいのでしょうか。

一歩間違えれば、基準を満たすことができず運営不能に陥ったり倒産してしまう介護施設を増やすことにもなりかねません。

 

人もお金も有限なのに人を大切にしてこなかったツケ

「人もお金も有限なのに文句ばっかり言っていても始まらない」「文句を言うだけなら誰でもできるのだから代替案を出せ」というご意見もあることでしょう。

一言でご回答差し上げれば「知らんがな」ということになりますが、それでは「無責任だ」「回答になっていない」ということになりかねませんので以下で説明をしていきたいと思います。

介護職員の人材不足の原因は総じて「今まで介護職員を大切にしてこなかったツケ」です。

介護職員の離職理由を突き詰めて考え、働きやすい環境を整備し、現場の声を拾い上げ、多くの人が働きたいと思えるような体制を取ってきたでしょうか。

ネガティブな部分を封殺し臭い物には蓋をして、表面上にメッキだけを施した付け焼刃のポジティブキャンペーンばかりを行ってきてはいませんか?

そもそも、介護職員の人材不足が叫ばれて何年経つのでしょうか。

昨年からですか?5年前ですか?違いますよね。

もう遥か前から懸念されてきたことを放置又は有効的な施策が打ち出せなかった結果が今なのです。

要は「介護職員にそれだけの価値を見出してこなかった結果が今」なのです。

これは、国や業界や事業所が今まで介護職員を大切にしてこなかったツケが回ってきているだけであって、更に「人員配置基準の規制緩和」というしわ寄せをしてくるあくどさには閉口してしまいます。

自業自得の責任転嫁をしてくる人達に「代替案を出せ」と言われてもお角違いですし、「知らんがな」「ちゃんと仕事をして下さい」としか言えないのです。

 

人員配置基準を厳格化した場合の人材確保の方法

現状でさえ人員不足の介護施設が多いのに、今以上に人員配置基準を厳格化してしまうと立ち行かなくなってしまう事業所も出てきてしまうことでしょう。

それについては「自業自得の結果なので知らんがな」ということを前述しましたが、最後に人材確保の方法についても触れておきたいと思います。

 

①潜在介護職員の活用

ちょっと古い統計ですが、厚労省が発表した「潜在介護福祉士」の人数は2012年時点で約45万人もいます。

つまり、介護福祉士資格を持っているけど介護現場では働いていない人の人数です。

この潜在介護福祉士を含め、介護現場から離れていってしまった介護現場経験者を再び介護現場に戻すことができればある程度の人材確保が可能になるのではないでしょうか。

但し、そのためには「介護現場に戻りたい」と思ってもらわなくてはなりません。

例えば、給料や労働環境や人間関係などが以前よりより良くなっていれば再び介護現場に復帰してくれる可能性も高くなることでしょう。

しかし、「2021年から人員配置基準の規制緩和」が決定した場合、業務負担が増える上に2倍のマンパワーだのイノベーションだのいうようなことが言われている業界に潜在介護職員たちはカムバックしたいと思うでしょうか。

少なくとも私がその立場なら、「うへー、また意味不明なことやってるな~」「絶対に介護現場には戻りたくねぇ~」「早々に辞めて正解だった」と思うことでしょう。

人員配置基準の規制緩和は潜在介護職員へアプローチできないどころか更に介護現場から遠ざけてしまう要因となるため悪手なのです。

もちろん、規制を厳格化したからと言ってカムバックしてくれるとは限りませんが、「介護職員が守られている」という環境を創出できればその確率は高くなるのではないでしょうか。

介護職員が「会社から守られている」と感じる環境でなければ悪循環は断ち切れない

 

②役人や有識者が介護現場で働くことがイノベーション

極論ですが、人員配置基準を厳格化してそれが満たせない介護施設は事業規模を縮小したり合併するなどして淘汰されていけば良いと思っています。

「それでは介護サービスを受けたくても受けれない高齢者が困るのではないか」と思われるかもしれませんが、人員配置基準で質も量も薄められた介護施設ほどミスや事故も発生する確率が高くなりますし、入所しない方が安全かつ幸せです。

施設入所ができないことによって家族の介護離職の問題もありますが、介護離職ゼロのために介護職員と利用者を不幸にさせる方針は明らかに不健全です。

誰かの犠牲の上に成り立つ福祉があってもいいのでしょうか。

それをしているのが現状なのです。

人員配置基準の規制緩和という小手先の方法では、責任の押し付け合いとしわ寄せのせめぎ合いでしかありません。

高齢者を収容するキャパシティが足りないと言うのなら、介護職員に負担を押し付けるのではなくお役人や有識者が2倍のマンパワーを創出し本業の傍ら介護現場で働き、介護職員と国民を守るイノベーションが必要なのではないでしょうか。

人もお金も有限なのですから。

【介護の経営学】「がんばれ」しか言えないのであれば管理者ではなく応援団だ

 

 

 

最後に

 

今回は、「人もお金も有限なのだから介護施設の人員配置基準を緩和しないのだとしたら介護職員の人材確保はどうするのか」ということについて記事を書きました。

まとめとしては、

  • 人員配置基準の規制緩和をすることで益々人員不足が加速することが懸念される
  • 介護職員の人材不足は人を大切にしてこなかったツケ
  • 人材確保のために介護現場にカムバックしたくなるような環境を用意して潜在介護職員へアプローチする
  • 介護職員に負担を押し付けることよりも方針を決めたお役人や有識者が現場で働くことこそがイノベーション

ということになります。

こういった方針を決めた人達にも自らの体を現場に投じて2倍のマンパワーを創出する本気のイノベーションを見せて頂きたいものです。

 

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