介護業界の異常性

「会社は従業員を守って欲しい」と言うことは権利だけ主張していることになるのか

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以前、「介護職員が「会社から守られている」と感じる環境でなければ様々な悪循環は断ち切れない」という内容の記事を書きました(下記記事参照)。

介護職員が「会社から守られている」と感じる環境でなければ悪循環は断ち切れない

これに対して、「では従業員(介護職員等)は会社を守る努力をしているのか」「自分の権利だけ主張して義務を果たしていないのではないか」というご意見もあるようです。

確かに、「自分の権利を主張するためには義務を果たしていなければならない」という理屈は理解ができますし、唐突なカウンターパンチに目から鱗の理論のようにも感じますが、実際問題、冷静に考えれば「会社の義務や責務」と「従業員の義務や責務」は法的にも実質的にも異なっているため、同じベクトルで「権利義務関係」を語ってしまうことには少々無理があります。

今回は、「会社は従業員を守って欲しい」と言うことは権利だけ主張していることになるのかということについて記事を書きたいと思います。

 

 

 

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「会社は従業員を守って欲しい」と言うことは権利だけ主張していることになるのか

 

 

従業員が「会社は従業員を守って欲しい」と主張することは権利だけ主張することになってしまうのでしょうか。

そもそも、会社と従業員にはどういった義務があって、従業員も会社を守る必要はあるのでしょうか。

以下で考察していきたいと思います。

 

従業員の義務とは?

そもそも、従業員には労働契約上、どういった義務があるのでしょうか。

会社という法人は、一個人(従業員)から見ればとても大きな存在です(中小企業であってもです)。

例えば、社会福祉法人であれば、理事長や理事や監事などで構成されていますし、株式会社であれば、代表取締役や取締役などで構成される法人格を有して社会活動を営む組織体になります。

更には、顧問弁護士などがいるわけですから、会社と従業員は初めから「象と蟻くらい違う」わけです。

象は蟻んこを守ることができるかもしれませんが、蟻んこが象を守るというのはほぼ不可能であり、もし守るという概念があるとすれば「愛社精神」という精神論になろうかと思います。

ここで注意をしておきたいのは、「愛社精神という精神論は法的義務ではない」ということです。

もちろん、会社に損害を与えてしまうようなことをしてはいけないという「忠実義務」はあります。

例えば、

  • 会社の信用、名誉を毀損しない義務
  • 二重就業の禁止義務
  • 秘密保持義務
  • 競業避止義務(会社の事業と競争的な性質の取引を禁止する義務)

などになります。

それらは「会社に隠れて副業をしない方が良い」という記事を書いた根拠でもあります(下記記事参照)。

副業禁止規定がある介護事業所で隠れて副業をしない方が良い3つの理由

そういった義務と労働契約による労働力の提供(介護現場で言えば利用者の介護)を問題なくこなしていれば、従業員(介護職員)のあらかたの義務は全うしていると言えます。

逆に言えば、従業員としての義務を全うしていない人が権利だけ主張するのは「確かに都合が良すぎる」ということには留意が必要です(下記記事参照)。

「介護職員の給料は安いのだから適当に働けばいい」という考え方が間違っている5つの理由

 

会社の義務とは?

従業員の義務については前述しましたが、では会社にはどのような義務があるのでしょうか。

規模や財力や社会的ステータスは個人の従業員よりも格段に大きいわけですから(中には会社を凌ぐほどの財力を持っている個人もいるでしょうが、それは例外です)、主従の関係や上下関係によって従業員が不利にならないように会社にはより多くの義務が求められています。

例えば、従業員に対しても利用者に対しても安全配慮義務などが課せられています。

利用者に対する安全配慮義務等については下記記事にまとめていますのでチェックしてみて下さい。

介護事業所が利用者に対して安全を確保しなければならない法的根拠と条文

安全配慮義務と一口に言っても、その詳細は多岐に渡ります。

  • 適性労働条件措置義務
  • 健康管理義務
  • 適性労働義務
  • 看護・治療義務

などによって、職場環境の健全化や従業員の健康管理に至るまで、様々な義務があるのです。

2020年6月1日からはパワハラ防止法の施行により、大企業の場合はパワハラの防止措置を講じる義務もあります(中小事業者は2022年4月1日から義務、それまでは努力義務)。

もちろん、労働契約上の労働者に賃金を支払う義務もあります。

2020年6月1日からパワハラ防止法施行!介護現場のパワハラは無くなる?実態と効果

 

「従業員を守って欲しい」と言うのは権利だけ主張している?

従業員と会社の義務をご紹介しましたが、ここでひとつ気づくのは、「会社が従業員を守ることは会社の義務」ということです。

ということは、「会社は従業員を守って欲しい」という従業員の主張は従業員の一方的な権利の主張ではなく「会社は義務を果たして欲しい」という「会社の義務の全うを促す当然の主張」であることが理解できるかと思います。

もちろん、従業員としての義務を全うできていない場合は「そういうお前も義務を全うしろよ!」と言われかねませんが、従業員として誠実忠実に労働を提供して会社にも損害を与えていない場合は義務を全うしていることになります。

結論として、「従業員を守って欲しいという主張は一方的な権利の行使ではなく会社側の義務責務の履行を促す至極当然の提言である」と言えます。

もっと言えば、従業員が自分に課せられている義務を全うしている場合は、「会社を守っていることになることと同義」と言えるのではないでしょうか。

 

あとは精神世界の話

会社も従業員も義務を全うしている場合、それでも「愛社精神」だとか「働かせて貰っているだけありがたい」という話は感情論や精神世界のお話になります。

もちろん、そういったお互いがお互いを尊重し合うような精神論にも良い部分はありますが、会社が従業員に対して過剰な精神論を求めてしまうと「やりがい搾取」に繋がりかねません。

「卵が先か鶏が先か」という因果性のジレンマによく似ていて、

  • 従業員が愛社精神を持つから会社も従業員を守る
  • 会社が従業員を守るから従業員が愛社精神を持つ

「さて、どちらが先か?」という状態のように見えてしまいます。

まずは、お互いが義務を果たすことから始めていくとすれば、「会社が従業員を守る方が先」なのではないでしょうか。

そして、そうすることで職場内の悪循環が断ち切れるのだとすれば、会社にとっても大きなメリットとなるでしょう。

介護の仕事は「やりがいだらけ」の「やりがい搾取」それでは人材が集まらない理由

 

 

 

最後に

 

今回は、介護職員や介護現場に限らずの内容になりましたが、「会社は従業員を守って欲しい」と言うことは権利だけ主張していることになるのかということについて記事を書きました。

結論は、「権利を主張しているのではなく会社の義務を促している」ということになります。

精神論で語れば、「愛社精神を持たない従業員は守られなくても仕方が無い」という理屈になるのかもしれませんが、残念ながら法治国家の日本ではそういうわけにはいきません。

現状では、法的にも義務の全うとともに会社側から従業員を守っていくことが求められている社会情勢なのです。

 

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