「介護職員や介護の仕事に興味があるけど、最近は良い部分ばかりクローズアップされて本質が見えにくくなった」
「リアル介護現場の生の声が聞きたい」
と思っている人もいらっしゃることでしょう。
そんな人から「介護の仕事は一体何が大変なの?」というご質問をお問い合わせフォームにてお受けしました。
大前提として「どんな仕事でも大変」ということは間違いありません。
しかし、介護現場を知らない人にしてみれば「介護の仕事についてもっと具体的に知りたい」「これから介護職として働く上で事前に知っておき心の準備をしたい」というお気持ちは大変よくわかります。
実際、私が無資格未経験で介護業界に飛び込んだ時も同じような心境だったからです。
そして、「心の準備」をする上で欠いてはならないのが「ネガティブな情報」になります。
何故なら、「ポジティブな情報は働く前に知らなくても、良い意味でのサプライズとなるため心の準備は無くても大丈夫だから」です。
つまり、「心の準備が必要なのはネガティブな情報」なのです。
今回は、「介護の仕事は一体何が大変なの?」というご質問についてご本人の許可を得た上でブログ記事にて回答させて頂きたいと思います。
尚、下記記事で介護の特殊性について触れていますのでご参考にして頂ければ、よりわかりやすいかと思います。
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介護の仕事は一体何が大変なの?
介護職員として介護の仕事をした場合、一体何が大変なのでしょうか。
全く初めて介護職員になろうとしている人へ向けて回答させて頂きたいと思います。
但し、「介護サービスの事業形態」や「事業所の方針や雰囲気」などによって多少違ってきたり、場合によっては全く違ってくる可能性もあります。
あくまで「私個人が経験上感じた大変さ」としてお読み頂ければ幸いです。
大変さ①:職員個々で言うことが違うため混乱する
介護現場は介護が必要な利用者の支援をする場所です。
ですから、色々な利用者が居て、中には対応に苦慮する利用者もいます。
となると、第一に「利用者の対応が大変」と言いたいところですが、そうではありません。
何故なら、多くの場合が「利用者の対応の大変さ」という事実をわかった上で入職してくるからです。
もちろん、「想像を遥かに超えていた」ということも往々にしてあり得ますが、問題はそこではありません。
本当に問題なのは、「職員個々で言うことが違うため混乱する」という点です。
どういうことかと言うと、
「暴言や暴力のある利用者も好きでやっているわけじゃないんだから耐えなければならない」
「どんな酷い仕打ちを受けても仕事なのだから常に笑顔で接しなければならない」
「利用者のネガティブな情報は記録に書いてはいけない、又は、オブラートに包んで失礼な文章にならないようにしなければならない」
と言う職員も居れば、
「介護職員だって人間なのだから、利用者からの暴言や暴力には適正な対処が必要」
「仕事だからと言って酷い仕打ちに耐えてヘラヘラ笑っているのではなくチーム全体で対応を検討していくことが必要」
「利用者の生活の様子はネガティブな内容も含め、事実をありのままに書く必要がある」
と言う職員も居ます。
前者と後者で極端な例を書きましたが、前者がいわゆる「キラキラ系介護士」と呼ばれる職員で、後者が「良識ある介護士」だと思っています。
世間一般や業界的には前者の方が良い職員に見られやすく「介護の常識」のような傾向にありますが、「世間の常識」から考えれば明らかに後者の方が理に適っていると言えます。
要は、「世間の良識とは真逆」なのです。
介護現場において前者の言う通りにすれば後者に注意をされ、後者の言う通りにすれば前者に注意をされるという理不尽な板挟み状態となってしまいます。
職場にこの両者がいた場合、「介護の常識は世間の非常識」という点で混乱しますし、どちらが自分の上司となるかで職場環境や自分の行く末も大きく左右することでしょう。
つまり、「人間関係が大変」なのです。
大変さ②:1人に対し1.3倍~2倍の業務負担がある
介護現場の多くは人員不足です。
それは事前情報でわかっているでしょうが、実際に働いてみるまでは「人員配置をしたりシフトを組む上司は大変だなぁ」くらいにしか思っていないと痛い目を見ます。
何故なら、人員不足であっても現場介護職員がしなければならない業務の量に変わりはないからです。
要は、本来であれば4人の職員で介護をする所を3人や2人の職員で介護を行うのですから、「1.3倍~2倍の業務負担があるため大変」ということになります。
更には、「その状況のまま残業」をしなければならなかったり、「急なシフト変更を依頼される」「滅茶苦茶なシフトを組まれる」と言ったこともあり得るのが「介護現場の人員不足」なのです。
そしてそういう状況が常態化していようとも、給料が1.3倍~2倍支払われることはまずありません。
介護現場では人員不足により人手が足りないだけでなく「業務負担に対する給料が割に合わない大変さがある」ということになります。
大変さ③:体力勝負のため体が資本
介護現場は体力勝負です。
もちろん、頭も使いますし各種書類仕事も山ほどあるわけですが、どちらにしても介護現場で介護をする場合は身体が資本です。
私が特にキツいと感じているのが、
- 梅雨から真夏の入浴介助
- ワンオペ夜勤での離床介助
です。
「介護現場では体力勝負」ということは既にご存知かもしれませんが、更には、
- 時間との戦い
- ほぼ同時に鳴り響く複数のナースコールの対応をする
- 利用者の対応中に他の利用者が転倒する
などの状況が精神と体力を削ってきます。
ですから、体力だけでなく、
- 判断力
- 適応力
- 推測力
- 分析力
- 平常心
なども同時に求められます。
また、前述したような「無茶苦茶なシフトに対応する体力」も必要になってきますから、「体力の四面楚歌状態で大変」ということになります。
大変さ④:新人は業務を押しつけられやすい
いじめとの線引きが難しいのですが、「新人職員は業務を押しつけられやすい」という傾向があります。
何故線引きが難しいかと言うと、
「仕事を覚えるために集中的にやって貰っている」
「数をこなさないと仕事を覚えられない」
という表面上の大義名分を言われるからです。
どんな業務を押しつけられるかと言うと、前述したような、
- 入浴介助
- 排泄交換
などの体力的にキツいものになります(「入浴介助が大好き」「ずっと入浴介助をやっていたい」という人もいらっしゃるでしょうが、それはまた別の話)。
しかも、新人ということと「仕事を覚えるため」という大義名分によって断りづらい状況に置かれます。
表面上は「仕事を覚えるため」と言いつつも、実質的には「業務の押しつけであり、いじめと何ら変わらない」という点で大変なのです。
大変さ⑤:「介護は大変」と言うと叩かれる
これは介護業界独特のもののような気がしていますが、「介護の仕事は大変」というようなことを言うと周りや世間から叩かれやすい傾向にあるように感じています。
例えば、
「嫌なら辞めればいい」
「お前は介護には向いていない」
「大変なのは介護だけじゃないだろ」
「介護だけ特別みたいに言うな」
「努力もしていないくせに文句を言うな」
などと言われたりします。
誰も「介護だけが特別に大変」「努力をしていませんが文句だけ言います」などとは言っていないのに、脳内で勝手に飛躍して叩いてくるのです。
その背景には、
- 介護職は底辺だと思って下に見ている(叩きやすい職種)
- 介護の仕事は愚痴や文句を言ってはいけないという風潮
- 介護職を叩いて優越感に浸りたい奇抜な人がいる
- 介護職を注視している人の中には性格の悪い人や人格破綻した人が多い
などが考えられます。
つまり、「介護の仕事は大変などと言うと叩かれるため介護の仕事は大変」なのです。
愚痴さえ漏らせぬ不寛容な環境であればストレスも溜まりますし、叩かれることで更に嫌な思いをすることになります。
下記記事で愚痴から生まれるメリットについてまとめていますのでチェックしてみて下さい。
最後に
今回は、「介護の仕事は一体何が大変なのか」ということについて記事を書きました。
介護の大変さと言えば一般的に、
- 低収入
- 人間関係
- 業務負担
- 問題行動のある利用者の対応
などが挙げられていますが、リアル介護現場の実情を私なりに掘り下げてまとめてみました。
ご質問者様への回答になっているでしょうか。
大変さばかりを書くと「介護職になりたい人が居なくなる」という懸念やご指摘もあるかもしれませんが、良いイメージだけ垂れ流してもあまり意味がないと思っています。
介護業界に存在する全ての法人や事業所に当てはまるわけではありませんが、業界の多くの事業所が人材不足であることから「やはりそこには何かある」と考える方が自然です。
本当に求められているのは、「こういうネガティブな記事を書かなくて済む業界になること」なのではないでしょうか。