介護の仕事は11K(きつい、汚い、危険、臭い、帰れない、給料が安い、休憩が取れない、休暇が取れない、腰が痛くなる、厳しい、窮屈)くらいは軽くあるお陰で、誰もがあまりやりたがらない職業になってしまっています。
実際に介護職員をやっている人達も「介護職辞めたい」と思ったり口から出てしまうことが頻繁にあるのではないでしょうか。
「だったら辞めればいい」という極論は元も子もないので今回は置いておきますが、「介護の仕事は皆が思うほど悪い職業ではない」と言う人もいます。
ここで気になるのは「介護職員を辞めたい」と言っている人は「介護の仕事が嫌」なのか「職場環境が嫌」なのかということです(両方イヤという場合もあるかもしれません)。
今回は、「介護職員を辞めたい」ということは、突き詰めて考えると何がイヤなのかについて記事を書きたいと思います。
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介護職員を辞めたい原因
介護職員として働いていくのが嫌になったから「辞めたい」と思ってしまうわけですが、何故介護職員として働いていくのがイヤになってしまうのでしょうか。
突き詰めてその原因を考えてみたいと思います。
退職理由トップ3
辞めたい原因は介護職員の退職理由を確認してみればよくわかります。
1位:人間関係
退職理由の1位が「人間関係」です。
つまり「職場内の雰囲気や環境に問題がある」と言えます。
お局職員のような存在がいれば人間関係も良くなりませんし、職種間でのマウンティングや言った者勝ちの世界が常態化している介護業界ではありがちな退職理由になります。
そしてこの場合、「介護の仕事が嫌になって辞めるわけではない」ということもわかります。
2位:結婚、妊娠、出産、育児
女性の割合が高い介護業界では、退職理由の2位が「結婚、妊娠、出産、育児のため」です。
この場合「家庭環境や自己都合」であるため、何かが嫌になって辞めるというわけではありません。
「辞めたい」というわけではなく「致し方なく」という理由でしょう。
しかし、特筆すべきは「男性職員の寿退社が存在する業界」ということです。
男性職員の寿退社の場合は「収入面や将来性」などの職場環境や待遇面の理由があります。
そしてこの場合も、「介護の仕事が嫌になって辞めるわけではない」ということがわかります。
3位:法人や事業所の理念や運営方針に不満
退職理由の3位が「法人や事業所の理念や運営方針に不満があったため」です。
現場を知らない経営陣が綺麗ごとばかり言って現場をかき乱したり、利用者の権利ばかり擁護して介護職員の人権や権利は侵害しまくるというような理念や運営方針では誰でも嫌になってしまいます。
つまりこれも「職場の環境や風通しの悪さ」の問題です。
そしてこの場合も、「介護の仕事が嫌になって辞めるわけではない」ということがわかります。
業務の過酷さ
退職理由から見ても「介護の仕事が嫌になったのではなく、環境や待遇や将来性に問題があって嫌になった」ということがわかりました。
そうは言っても「介護業務は11K以上の過酷さがあるのでは?」という疑問が湧いてくるため、この点も突き詰めて考えていきたいと思います。
人員不足で過重労働
「介護業務が過酷」となってしまうのは、人員不足であるために「過重労働や業務過多」になってしまうためです。
休憩が取れなかったり、定時に帰れなかったり、1人で2人分の業務を負担しなければならない状態が常態化しています。
これらは全て、人員を確保できない事業所の責任であって「職場環境の問題」なのです。
また、人員配置基準を満たしていても介護職員一人一人の負担が大きい状態です。
ワンオペ夜勤では1人の職員で20人もの利用者の介護をしなければなりません。
これは「介護保険制度の問題」です。
介護の仕事が嫌なのではなく「人員不足を放置したままの過重労働がイヤ」なのです。
排泄物を扱う仕事
介護の仕事は利用者の排泄物などの汚物を扱う仕事です。
しかし、「だから辞めたい」と言う介護職員は聞いたことがありません。
「何度も布団を汚されたため介護職員が入所者を殺害した」という介護事件もありましたが、この場合は排泄物が問題なのではなく「職員の資質とキャパシティを超えさせる環境が問題」だと考えられます。
利用者からの暴言や暴力
利用者からの暴言や暴力は、介護職員が「辞めたい」という気持ちが起こりやすくなります。
「暴力を受け続けなければならない仕事なんてイヤだ」と思ってしまうのも無理はありません。
介護職員が利用者に対してかすり傷ひとつ負わせれば大問題となりニュースで報道されたりしますが、日常的に行われている利用者から介護職員への危害は容認されたり黙認されている状態です。
明らかに介護職員の人権や権利や身体が侵害されています。
しかし、暴力を受け続けるのを容認するのは介護の仕事ではありません。
介護職員の人権や権利や身体を侵害される行為を容認してしまったり黙認している事業所や介護業界がどうかしているのです。
つまり「業界の風潮や事業所の対策不足」という環境の問題なのです。
介護の仕事がイヤなのではなく、「介護職員の身体や人権を踏みにじるような業界や事業所の風潮や体制がイヤ」なのです。
腰や身体を壊す
介護職員の職業病は腰痛です。
利用者を抱える業務だけでなく、中腰の体勢になる業務も沢山あります。
腰痛や身体を壊し辞めていった人も知っていますが、これらも「業界の風潮や方針の問題」と言えます。
ストレッチやボディメカニクスを推奨していますが、「移乗用のリフトや機器を必ず使用しなければならないというノーリフティング宣言」を業界全体で行い、ノーリフティングケアを早い段階から実施していれば現状のように腰痛で悩む介護職員も格段に減っていたでしょう。
残念ながら、まだまだ多くの介護事業所ではノーリフティングケアは浸透していません。
介護の仕事がイヤなのではなく、「腰や身体を壊してしまう環境だから辞めたい」ということになります。
賃金や将来性が割に合わない
介護職員の収入や将来性は低水準なのは周知の事実です。
しかし実際に働いてみると「どう考えても割に合わない」ということが沢山あります。
黙々と働いていると何も文句を言わないことをいいことに奴隷や召使いのように扱われ、文句を言えば綺麗ごとで頭を踏みつけられる日々です。
低賃金で将来性もないのに、求められることが「いちいち割に合わない」ことに問題があります。
これは介護の仕事がイヤになったわけでなく、介護職員の賃金に充てる財源の問題や業界の方針が割に合わないためイヤになり「辞めたい」と思ってしまうのです。
最後に
今回は、「介護職員を辞めたい」と考える人の理由を突き詰めて考えていくと「介護の仕事がイヤなのではなく制度や環境や待遇や方針がイヤだった」ということについて記事を書きました。
もちろん中には「利用者の顔を見ることさえイヤになった」「認知症者の介護そのものがイヤになった」という人もいらっしゃるかもしれません。
しかし多くの場合は「介護の仕事自体がイヤなわけではない」ということに気づきます。
違う事業所に転職することもひとつの手段でしょうが、多くの事業所で似たり寄ったりの状況であるために多くの介護職員が不満を抱え「辞めたい」と思ってしまっているのが現実ではないでしょうか。
介護の仕事は悪い仕事ではありません。
ただ、リアルな介護現場を知らない人達が制度を作ったり方針を決めたり理念や環境を整備しているため、「現場の実情に沿っておらず逃げ出したくなってしまう介護職員が大勢いる」というのが実情です。